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王道を走れば:幻想にて
第三章、その3の3:三者の計画
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た二人は視線で物を言っているようだ。最近は初夏に関わらず冷たい日々が続いているのだから、屋内にまで寒々とした空気を放たないで欲しい。そう思いつつも止める気が沸いて来ないレイモンドは二人の睨み合いを他所に、書簡を広げて職務を始めていった。




 茜色の線状の光が、王都に夕刻の到来を告げる。煌びやかに染まる王都の街並みは常の通りに壮麗である。その街並みを背に、或いは太陽の光を反射するように物を翳せば、それは何時も以上の輝きを放つだろう。掌の血潮、或いは宝飾品でも。

「おっほっほっほぉぉ!これはいいものだ!いいものだ!」

 細い手の中に反射するのは、帆船を象った小さな模型である。帆の三角加減や船首の女神像の淡い笑みに至るまで微細な趣向を凝らしており、一級品に相応しき繊細さと優美さを兼ね備えていた。だがそれを見上げる女性にとってはそれは大して重要な事ではない。重要なのは、その外観全てが金色に染まっている事だ。それが西日を浴びて輝く様は、正に黄金色の泡沫のような刹那の美しさを持っているといえよう。

「見て下さいよ、御主人!金ぴかですよ、金ぴか!わぁぁ、すっごく綺麗!」
「あんまり乱暴をすると価値が無くなるぞ」
「大丈夫ですってそんな簡単に壊れたりしなーーー」

 瞬間、バキッと、美しき風景に無粋な破壊音が流れる。マストが半ばより折れて、左の親指と人差し指の間に挟まっていた。感触を確かめようとした瞬間にこれである。船体がかなりの完成度を誇っていただけに、この大規模な損傷はその価値を大きく損なうものといえよう。
 事故の発起人である女性、パウリナは分割されたその船を力無く下ろして屋根の上に乗せた。一仕事の後の開放感が虚しさへと変わった瞬間であり、露出度の高い服の上に纏った黒の外套と、紫の頭巾が力無く揺れていた。猫耳が生えていれば、それはしゅんと垂れていたであろう。主人であるユミルの視線が背中に痛みを走らせる。

「・・・はいー、じゃぁ次ぃ次ぃ」
「おいこれ・・・」
「い、いいんですよ!まだ盗んだ物はたっくさんあるんですから!わーこれもいい金細工だなー。高く売れるだろうなー」
「それ金メッキ」
「まっさかぁー。そんな訳ある筈ーーー」

 パキッと、再び軽やかな破壊が奏でられた。今度は紅葉の形をしたブローチであり、中央の葉脈の部分から真っ二つに裂けている。貴金属とは無縁の茶褐色の中身が覗いていた。居た堪れぬ視線を届けるユミル。

「・・・えいっ」
「あ」

 パウリナは軽やかな声と共に裁断されたブローチを宙へと投擲する。赤い陽射と緩い風を受けながら金色の葉はひらひらと二つの軌道を描いて、直ぐに陰に染まった街並みへと落ちていった。

「・・・御主人にも助かっていますよー。昔よりも楽に盗みをしやすくなってます
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