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英雄王の再来
第5騎 トルティヤ平原迎撃戦(その2)
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うか。

「ぼ、僕・・・いえ、私は、ソイニ・ラウリラと言います。」

こちらも、全くと言って良いほどの同じ特徴を持つ男の子だ。違う所といえば、髪が短いと言うくらいか。歳も同じ位か。似ているところを見ると、姉弟か。

「ん?姉弟か?」
エル様も、私と同じ疑問を持ったらしい。

「「い、いえ。双子です。エル様。」」
彼らは、声を揃えて答えた。なるほど、間違いないらしい。その答えに、エル様は苦笑されている。彼らはそれに、少しばかり驚いた表情を見せる。

「いや、ごめんごめん。二人とも、もちろんの事、褒美を与える。何でも良いから、考えて置いてくれ。」
先程と同じように、そう伝えられた。そこで退席すると思っていた双子だが、その場を動かなかった。緊張で立てないのか、私がそう思った時だ。想像の斜め上に行く答えが返ってきた。

「え、エル様!じ、実は御願いは、もう決めてあります!」
ルチルが、そうもどりながらも言う。それに少しばかり驚いた表情を見せるエル様だが、すぐに笑顔に戻る。

「そうか、なら、聞こうかな?」

「わ、私達を、エル様のお側に置いて欲しいのです!」
場が一瞬ばかり、凍りついた。その静寂に包まる場に、不安そうな彼女らの顔から、血の気が引いていくのが分かった。

「それは、従卒に。と言うことかな?」
さすがにエル様も驚かれたのか、探るようなお声だ。しかし、その表情は変わらず、微笑みを携えている。
 王族の従卒と言うのは、アトゥスでは、非常に厳しい条件がある。地位、家の正統性、能力、人格等ありとあらゆる項目に置いて、高格の者でなければ成る事は叶わない。特に、エル様は王位継承権第3位の王子である。その条件はより厳しいものとなる。これは、さすがに難しい。彼らは、今回の作戦に偶々、招集された身分の低い者だ。どの項目も満たしてはいない。

「よし、わかった。なら、2人とも明日から私の従卒だ。よろしく。」
そうですね、さすがにそれは叶いませんね。ん?

「え、エル様!?」
私は狼狽した。戦場でも、ここまで取り乱した事はないだろう。

「どうした?アレスセレフ。」

「いえ、この2人を従卒には難しいのではありませんか?」

「いいんだよ。決定権は、王子たる私にあるんだから。」
その答えに、確固たる意思が見えた。こうなると、もう周りの意見が通ることはない。まだ、短い付き合いだが、それぐらいは分かるようになってきた。
 そう言われた2人は、顔を輝かせて、御礼を言ってから退席した。しかし、これには他の家臣達も飽きれ気味だった。まぁ、「破天荒だな、この人。」ぐらいの好意から来るものだろうが。


その夜
アトゥス王国軍陣営 シャプール砦
王子 エル・シュトラディール


 アトゥス王国暦3
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