第5騎 トルティヤ平原迎撃戦(その2)
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は、そこで意識を手放した。
アカイア王国軍陣営
第一等将軍 バショーセル・トルディ
彼の目の前には、つい先刻までには想像をもし得なかった光景が広がっていた。いや、霧のせいで全体像は見えないのだが。しかし、彼のもとに届く報告は、信じ難いものには違いない。
「報告します!右翼、パセルヘア将軍、撤退を申告!」
「左翼、ナルディア将軍の部隊、撤退しつつあります!」
“アトゥス軍が大軍を率いて、両翼に急襲してきた”その報が届いて以来、このような報告が矢継ぎ早に来るのだ。
「一体、何が起こっているのよ・・・?」
彼は、もとい彼女は、困惑していた。アトゥス軍は、完全にこちらの策に嵌まり、アカイア軍の大勝利が目に見えていたのだ。それが、瞬きをするほどの暇に、戦況が変わったのだ。
「と、トルディ将軍、どうしましょうか?」
そう、遠慮がちに問い掛けてきたのは、先程逃げ出すように本陣から出て行ったヘルセント・デューナー参謀長である。彼も同じく、信じ難い報告を聞き、舞い戻ってきていたのだ。
「どうしましょうか、ですって!?あなたは、参謀長でしょう!私に聞く前に、少しは考えなさい!」
甲高い声が、周囲に突き刺さるような響く。そして、彼女は、手に持つ鞭を振り回している。
「ひっ!・・・あ、あ、では、アトゥス軍はこちらの動きを知っていたに違いありません。わ、我々が少ない軍の後ろに大軍を隠していることを。」
デューナーは、恐怖に怯えながらもトルディの質問に答える。
「ぐぬぬぬ、くぅーっ!?」
トルディは、声にもならぬ、音にもならないものを立てた。
「こ、ここは一度撤退して、建て直すべきかと。」
デューナーは、さらに問い掛ける。しかし、この問い掛けまでの理屈は、論理として破綻している。本来であれば、起きた事柄に対し、その起きた原因は明確かつ、正確でなくては成り立たない。しかし、デューナーの言い分は、逆の論理である。つまり、起きた事柄に対し、それらしい推測を当て付けたに過ぎないのだ。だが、混乱するアカイア軍陣営には、それすらも魅力的な答えに聞こえるのだろう。
「し、仕方ないわ。一度、トルティヤ平原の北まで撤退します。」
「はっ!」
そうして、アカイア軍全軍に、撤退の指示が出された。良く良く考えれば、彼らに出てる被害が実質的なものではなく、相対的なものだった事に気づけたに違いないが。しかし、アカイア軍は、5万もの大軍を半包囲させると言う密集体形を取っていた事もあり、混乱が大きく、収まらなかった。
さらに、2時間後。
アトゥス王国軍陣営 シャプール砦
士騎長 アレスセレフ・クレタ
アカイア王国軍は、撤退した。斥候の報告によると、トルティヤ平原の北に再集結しているようだ。
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