第5騎 トルティヤ平原迎撃戦(その2)
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度撤退し、再編成する様相を見せているのだ。これだけの大軍が混乱し、統率が出来ないと言う事は、壊滅に等しい状況だ。撤退はやむを得ない措置だった。しかし、そんな事をされれば、私は何の功も上げられずに終わってしまう。それだけは、それだけは避けなければならない。だからこそ、この混乱の中で、敵大将を探している。
「えぇい!ヒュセルは何処だ!逃げずに姿を現せ!」
私は、大声で叫んだ。手柄を何としても、私の手に入れたいのだ。その時、ふと思いも知らない声が返ってくる。
「それは、無理な質問だ。ヒュセルは、もうここにはいないからな。」
この状況にも、何の不安や恐れを抱いていない声だった。その声の主は、全身が黒色に染まった甲冑を着ており、そのマントさえも黒色である。小柄と言える体型だろう、そう思っていた。
「何奴!?」
「それも、答える必要のない質問だ。何故だか分かるか?」
低く笑いながら、そう言った。その顔は、まだ、あどけなさが残る少年だ。ただ、その顔から異様な“威”を感じさせる。
「偉そうな事を言う!ヒュセルがいないなら、お前の首を貰ってやろう!」
その異様な“威”から、兎も角、身分の高いものだろうと踏んだ私は、長剣を相手に叩きつけた。
「やれるなら、やってみろ!」
相手は、そう言いながら、私の一撃を軽やかに避けた。馬に乗っている事を忘れさせるかのように、馬ごと目にも止まらぬ速さで避けたのだ。そして、翻った勢いのまま、手に持つ長剣を白く煌めかせて、私に斬りつけてきた。瞬間、お互いの間に火花が散り、鋭い音が鳴り響く。私は、何とかその一撃を受け止めた。しかし、その一撃は、相手の見た目とは程遠く、とてつもなく重いものだった。さらには、手が痺れ、剣を持つ手に力が入らない。
「そういえば、先程の答え、教えていなかったな。何故、名乗る必要がないのか・・・それは、お前が負けるからだ!」
相手は、そう叫んだ。もう一度、白刃を煌めかせて、私に目掛けて斬りつけてくる。痺れるこの手では、防ぐ事は叶わなかった。相手の一撃は、剣を折り、私の胸に強かに衝撃を与えた。壮麗に装飾した鎧を断ち割り、その衝撃に吹き飛ばされ落馬する。胸を打つ痛みと、落馬の痛さに意識が遠くなっていく。遠くなる意識の中、ある光景と声が飛び込んできた。
「エル様、ご無事ですか?」
「あぁ、問題ない。それで、レティシアとジムエルは?」
「はっ、あちらも撤退の準備が出来たと。」
「よし、全軍に伝えよ。敵の撤退に合わせて、こちらも退く。」
・・・エル、その名には聞き覚えがあった。しかし、遠くなる意識の中、それを考えることは出来ない。エル、そう呼ばれた少年がマントを翻し、去っていく。そのマントは、黒一色ではなかった。黒地の中央に、白い百合の花が咲いていた。・・私
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