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王道を走れば:幻想にて
第三章、その2:西日に染まる
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クに決めて口元に見事に整えられた髭を持ち、粛清という言葉が似合いそうなくらい勇ましき顔付きをして黒いロープを身につけており、怒り顔の羆に耳を引っ張られながら慧卓の前に現れた。
 
「こいつ?」
「そうそうそいつ。おじさん、これどうやって使うんですか?」

 耳から指を離されたたらを踏んだ男に慧卓はディルドーを突き付ける。男はそれを見てにかっと破願して懺悔室の聖職者のような厳しい声で言う。 

「それかね?無垢であるが故に信仰を持たぬ少女に、その瑞々しくも硬く守り通された純潔を代償に、偉大にして清廉な主神の教えを教授するために使うものだ。苦痛の苦悩を乗り越えた先に、真の信仰は芽生えるのだよ」
「詰まりバージンマントをブレィクする道具ですね」
「なんてモン押し付けるのよ。あんたの不浄の穴に突き入れて喰わせるわよ」
「ま、待ち給え!我が純潔は既に我が偉大なる祖父達に捧げておる!無機質にして冷酷な木の釘を振り翳すのは止め給え!さもなくば貴殿らに遍く天罰が下るぞ!」
「遍くに天罰ですって?貴方共産かぶれのエセ信徒?一度絶頂地獄を見た方が楽に主審の御座に辿り着けるわよ。一発やっとく?ねぇ、慧卓君」
「くま、熊先生・・・あっ!いやいや止めときましょう!流石にダンディー中年の絶頂フェイスは気持ち悪いです」
「それもそうね。ほら、これ持ってさっさと消え去りなさい・・・なんか動き始めたし」

 熊美がディルドーを無理に男に突き付けた時、その凄まじき膂力に反応したかディルドーが螺子のような音をしながら先端を右に左に揺らし始めた。技術の無駄を凝らした道具を返された男はそれを懐に仕舞って謝意を述べた。

「おお、慈悲に感謝するぞ羆殿。ああ、ところで青年」
「はい?」
「私からの祝福だ。これを受け取っておき給え」

 代わりに取り出したのは紙の封筒に包まれた何か。その場で広げて中身を手の中に零す。それはありふれた銀色のチェーンと見た事も無いような不可思議で霊妙な紫紺色の光を放つ宝玉で形成される、一つのアミュレットであった。何処か古めかしい印象が見受けられ、遺跡に潜ればあっさりと見つかりそうな程の。よく見れば、宝玉の囲いには『セラム』で使う流線的な古めかしい文字が刻まれている。読めないのが実に残念だ。

「・・・アミュレットですか・・・でも何か変な見た目ですし、売れなさそうですね」
「ふん、率直な意見だな。だがその手の者にとっては貴重極まりないものだ、私のこの髭にかけて保障しよう」
「ふーん?なんでそんな事が?」
「『価値あるものはえてして無名』。そんな言葉があるのだ、実際にそれにも価値があるのだろう。私には理解できんがな!そんな物に金を叩く奴が居るとは、此の世も随分と風変わりなものよ!ハハハハ!!」

 からからと夏の日差しのよう
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