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王道を走れば:幻想にて
第三章、その2:西日に染まる
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わ。言葉を長々と述べるよりも、身体を思いっ切り動かす方が好き」
「・・・そういえばリタさんが言ってましたけど、俺が貴族の人と歓談をしたり講義をしたりしている間、熊美さん、騎士団の所に行ってたそうな?」
「あら、噂の足は速いわね。その通りよ。自分が礎を築いた騎士団がどんな姿になっているか、興味が沸いてね・・・うふふふ、本当に逞しくなってたわ」

 笑みを深める熊美。先程まで浮かんでいた片親のような温かみは俄かに失せ、代わりに老廃したいやらしさが浮かび上がっている。

「訓練の内容も凄く実践的になっているし、陣形の形成もとても早くなっている。とても立派だったわ・・・でもそれ以上に・・・うふふふ・・・」
「な、なんすか」
「あのね、こんな事言ってちょっと変態臭いと思われちゃうけど・・・でゅふっ、紅顔の美少年が多くて・・・」
「うわぁ・・・」

 一気に表情を爛れさせた熊美に生理的な嫌悪感を抱く慧卓。胸中の不安が心の隅っこの方へと追いやられたのは不自然でもなんでも無かった。 

「あっ、慧卓君は対象外よ。私が好みの子はね、明確に男と女を意識する、その一歩手前の初々しさを持ってる子なの」
「・・・あ、そうですか・・・なんて腐ったハンニバル」
「何か言ったかしら?」
「いや特に何も」

 外見が飛鳥時代の彫像のような逞しさの癖に愛すべきは血や黄金よりも少年の貞操ときたか。慧卓はかくの如く思い、ついついと冗談を零した。
 彼の顔から暗い色が見た限り見受けられなくなったのに安心してか、熊美はその渋みのある顔に晴れやかな笑みを浮かべた。

「午後は日暮れまでに宮殿に戻ってくれるなら後は自由らしいから、私と一緒に街に出ましょう。いい所、案内してあげるから」
「本当ですか?凄く期待しますよ」
「任せなさい」

 そう言って二人は手付かずのままであった昼食を再び頬張り始めた。口に入れ込むスープは既に温いものであったが、さりげない心遣いにも似た優しい酸味は衰えず、慧卓の咥内に染み渡っていった。

「ところでリタちゃんとは?」
「ワンチャンスありませんでした」
「あ、そう」

 スープに千切ったパンを浸して口に放り込もうとした時、赤く染まった生地から一滴の水滴が落ちて高級そうな純白のテーブルクロスに染みを作ってしまう。下品な事をしてしまった、これからは控えていこう。そんな考えを巡らせながら慧卓はパンを咀嚼していく。
 窓際から注ぐ光は煌びやかな白を湛えており、その下に石と木が入り混じった街並みは光沢を放っているのだろう。愉しみを抱きながら二人は昼食を進めていった。





「・・・で、此処が『ウールムール王都支店』。此処は良いわよぉ。綺麗な衣装を直ぐに欲しいと思うならやっぱり此処が一番ーーー」
「ちょ、ちょ
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