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王道を走れば:幻想にて
第三章、その2:西日に染まる
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やらしさで傾いたのに気付いたか、クィニは慧卓が気付かぬほど微細に瞳を細めた。

「昼食につきましてはクマミ殿とお二人にて、御願い申し上げます」
「?あの、コーデリア王女や、アリッサさんは?」
「あの御二方は前者はいうべきに及ばず、後者につきましても王国に多大な御貢献をなされた偉大な騎士である故、その責務の全うは非常に重大な事が多く含まれているのです。ケイタク殿と昼食を共に出来ぬ以上に重大な事が」
「そうですか・・・すみません、無理を言ってしまって」
「いえ、お気になさらずに。取り敢えずは身支度を整えさせていただきます。さぁケイタク様、此方に侯爵の方々と御歓談するに相応しき衣装をご用意させていただいております。どうぞ此方の方へ」
「・・・ちなみに聞きますけど、まともに貴族として此処で暮らすとしたら、一日何回着替えます?」
「そうですね。衣装の交換は官位の高低や人の好みによりけりですが、私が知る限り最も多い方で、五回はありますね」
「五回分の汗を出すまでに脱水症状で死んでますね」
「貴方の場合、その前に緊張で胃を潰しているでしょう。さぁ、時間に猶予は御座いません。早く此方へ」

 彼女が手を差し出す方から侍従が二名、慧卓のために用意された黒の正装を手に持って現れた。朝食の締めである芳醇な果汁のジュースを飲み干し、慧卓は「黒ばかりじゃ飽きるなぁ」と思いつつ、その方向へと足を進めた。
 時は既に刻四つ半。朝の政務は既に始まっており、さながら渦を巻く水面のように慌しさを伴っている事だろう。慧卓もまたその渦中で暫しの間、揉まれる羽目となるらしい。




「ふーん、そういう事だったのね」
「超疲れました・・・」

 昼時、二人の人間が顔を合わせて昼食をとっていた。一人は慧卓、もう一方は熊美である。それぞれの用を片付けた後に共に昼食を採る事となっていたのだ。
 ぐってりと食卓に額をつける慧卓を見て、熊美は湯気薫るトマトのスープを口に入れながら尋ねた。 

「何はともあれ、お疲れ様。貴族との歓談は激務よね?」
「分かってくれます!?あれ本当にシンドイんですよ!皆海千山千の老練な政治家ですよ!下手な嘘つきゃそれとなく釘を刺されて、言葉を拾えばその意味を問われてその本質について延々と話されるわ・・・まだこっちが若いし新鮮な人だからって俺を立ててくれますけど、これ一月もしないうちに何かしないとマジでヤバイんですよ!!何がって?俺を立ててくれたあの人達の立場ですよ!!」
「落ち着きなさい、苦しいのは分かったから!!」

 一喝。綿で締め付けられたかのように心から余裕が抜け切っていた慧卓はびくりと震えて、項垂れるように食事に集中し始めた。いきなり顔を合わせる事となった大貴族の方々に何を言われたかは推測できないが、その中身は大方知
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