第五十二話 思春期E
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ようと、「見ているのか、変態」と罵ってオーバーキルしたことすらある。
今回だってそうだ。エイカはめんどうなことには、関わろうとしない。アルヴィンが悩んでいようと、自分にはどうでもいいことだから。そう思う気持ちがあったから、彼の困り顔を面白く見ていられたのだ。それなのに、関わりがない、と本人から避けてくれたというのに、それにもやもやした気持ちがエイカの中で生まれる。
さっきから、何かが足りない。それが、エイカの中で何故か苛立ちになっていた。
「(……こいつ、全然笑ってねぇのか)」
笑顔の練習をしている。アルヴィンが言った言葉を思い出し、ようやく違和感の正体に気づく。相手は、無表情という訳ではない。困ったような、おどけたような顔だってする。声だって平坦ではなく、起伏や強弱、感情も籠っている。ただ、笑みがないだけ。
違和感に気づくと同時に、エイカはアルヴィンの目を見据えた。それに不思議そうな顔をされたが、知ったことではない。エイカの瞳に、ふつふつとした怒りが映ったことに、今度こそアルヴィンは狼狽した。
「あの、……エイカさん?」
「…………むかつく」
「えっ、えぇーー」
いきなりの文句に呆然としたアルヴィンを睨み付け、エイカは苛立ちでくしゃくしゃになっていた紙を広げ、ポケットに入っていた鉛筆で書き殴る。『休憩する』とだけ書いた紙を丸め、店の中へ全力投球。後におっさんの悲鳴が聞こえた。
友人の突然の行動に、もはや冷や汗しか出ない。何か地雷を踏んだだろうか、と記憶を探るアルヴィンは、エイカが近づいていたことに気づかなかった。ガシッと握られた腕に意識が戻り、次に無遠慮に引っ張られ、引きずられる。女の子が男の腕を引くという、シチュエーションでありながら、全く嬉しくない。むしろ怖い。
怒りの原因がわからない女性ほど、下手な行動は取れない。見当違いのことをすれば、怒りが増幅するからだ。前世の人生経験を含め、思考したアルヴィンは、抵抗せずにおとなしくついて行くことにした。女系家族の男は、女性に対してフェミニストなんだ、と訳の分からない言い訳を頭の中で並び立てていた。
なんてことはない。8歳の女子にビビる、ただのヘタレであった。
******
「5秒以内に、何があったかを簡潔に言え」
「いや、エイカ。いつもの公園にわざわざ来て、座って第一声がそれって」
「5……4……3…」
「妹と喧嘩をしました」
プライドも何もなかった。今のエイカなら、5秒経っても何も言わなかったら、何をしてくるかわからない。彼女がここまであからさまに、怒りを見せたことにアルヴィンは戸惑いしかない。からかったわけでもないため、結構本気で焦っていた。
それとは別にエイカは、―――実
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