第五十二話 思春期E
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葉は、極論だ。相手のことなど関係あるか、と言わんばかりの乱暴なもの。アルヴィンにだって言い分はあるし、納得できないところはある。それでも彼女の言葉は、間違いではなかった。
「……だ、だけど!」
アルヴィンは、堰を切る。エイカの言葉に、心に生まれた衝動が、抑え込んでいたものを噴き出させた。
「持っていることが、最初から決まっていたらッ!」
「は?」
「……ッ、その、エイカが言っているのは、偶然持っていた場合のことだろ。最初から、本当に最初から、自分から望んで持った場合は、違うだろ。みんなは偶然もらったものを、もし、そいつだけ必然的にもらっていたら、それは……責められても仕方がないことだろ」
突然のたとえ話に、エイカは目を白黒させる。アルヴィンは、途中でまずいと思い、言葉を選んだ。それでも、本心の大部分を打ち明けてしまっていた。
突拍子のない、それも現実味のないこと。常人なら、「何を言っているんだ、こいつ?」と相手の頭の心配をしたことだろう。さっきまでの話をすり替えようとしている、と怒られても仕方がない。エイカとしても、頭大丈夫? 状態なのは変わらない。
だが、如何せん―――彼女は彼女だった。変人相手に、友人として付き合える相手を常人とは言わない。意外に律義な性格が、エイカに会話を続けるという選択肢を選ばせた。
「……つまりなんだ。お前が言いたいのは、魔法やレアスキルを最初から持っていることが決まっていた場合は? ってことか」
「お、おう。エイカだって、その、例えば生まれる前に『この世界で最強になれる力を下さい!』とかお願いしたら、叶っちゃった……、とかいう相手がいたら、ずるいと思わねぇの」
「…………」
「エイカは、魔法の勉強をして、強くなるために努力をしているだろ。それなのに、世界最強の力をもらったやつが、当たり前のようにそこにいる。それでもエイカは、それを見て勝手に傷つくやつがおかしいって言うのか」
アルヴィン自身、先ほどのエイカのように極端な話をしていると思うが、似たようなものだろう。最強の力なんて、ほしいとは思わないが、自分はそれを望めたかもしれない立場にいた。現に、もらっているものがある。
エイカを問いただすつもりはなかった。だけど、どのように踏ん切りをつけたらいいのかがわからない。アルヴィンにとってみれば、一生悩み続けたかもしれない疑問。
「ふーん、だから?」
エイカの返答は、それがどうした、言わんばかりだった。
「いや、だからって…」
「ずるいと思うやつは、そう思うだろうな。俺としてはチャンスがあったら、もらうのは当然だと思うが。それも1つの理不尽な世の中、ってやつじゃねぇの。ただ単に、そのチャンスがもらえたか、もらえなかったか、ってだけだろ」
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