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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1の3:方々に咲く企み
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方で寝静まった時間帯には静けさ以外は存在しない、とても優美な場所となる。

「・・・ふむふむっ。ふむふむっ!そうかそうかっ!!」
 
 用水路の近くに軒を置く二階建ての石造りの宿屋、『キールの麦』の二階のバルコニーから一つの高い声が響いた。声の持ち主は若さと情熱が溢れる二十前半の若者であり、吟遊詩人のようなゆったりとした服を纏い、手に持った紙の内容と聖鐘を見比べてはうんうんと頷いていた。

「見よっ、あれがかの名高き、王都の聖鐘だよっ!!王国に輝ける主神の威光を伝え、臣民の心の拠り所となる鐘なのだよ!!見れば見るほど不貞腐れた外見をしていると思わないかね!?」
「そりゃ見れば分かるってんだ。でぇっ、本当にあるんだなぁ?」
「んん?おぉ、そうだな、君の願いと私の崇高なる願いは別物であったな!うむうむ、確かにあるぞ!王国、否、『セラム』随一の秘宝、『黒檀の義眼』の隠し場所を記す地図がなっ!」

 問いかけられた強い問いに、若者は紙を外にぽいっと捨てて部屋の中へ戻る。中にはこの者以外に二人の男が居た。
 一人は獣の皮を剥いで作った蛮人風の衣服を纏い、顔立ちや体躯が虎のように勇猛に鍛え上げられており、腕や頸周りに深い渦模様のタトゥーを彫っている男である。貴族が住まう地区に関わらずボロが目立つベッドに腰掛ている。質問をしたのはこの男だ。
 もう一人は、目元をすっぽりと覆うフードが付いた灰色の外套を纏っており、臙脂色をした軽装の革鎧を下に着ていた。フードから露出した顎以外の外皮は人目を避けるかのように隠されており、その顎に至っては深い碧をした鱗のようなものがある。否、事実トカゲのようなざらざらの鱗が顔に生えており、壁に寄り掛かって若者を冷静に見ている。

「約束は履行しよう!君達にはそれ相応の対価を支払うぞ」
「そうこなくっちゃ!そうでなきゃ、俺ぁあんたの頸を切って金目の物毟れるだけ毟りとって廃棄してたぜ」
「・・・よく其処までノ情報を掴んだナ?義眼は国ノ宝というノニ」

 鱗の男はごろごろとした訛りが抜けきれていない声で問う。若者は得意げな笑みを浮かべて言う。

「ふふふっ、私には君等には無い伝手があるのだよぉ!そうっ、君等下賎の者には無い、確実な伝手がねっ」
「へぇぇ?んじゃ俺等にちょいとばかり、そいつを話すってのも駄目なのかい?」
「いやいや、話してやるとも!面白い話だからね。実を言うとだねっ、この情報っ、くふふっ・・・なんとだね!地図の管理者直々に教えてくれたのだよっ、ハハハハっ!!」

 若者のもったいぶった口調から一気に快活な大笑いが毀れた。他の二人は呆れたように口を開けて視線を合わせていた。

「・・・そいつ、阿呆ではないカ?」
「阿呆だよなぁ」
「阿呆だよっ!実際に隠し場所まで案内してくれるほどのね
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