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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1の3:方々に咲く企み
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るという事は・・・)
「此処は王都中心部にある、東住民地区の一角ですよ、御主人」
「思考をよむな」
「へ?」
「いや、なんでもない」

 男は頭を振って疑問を言葉にした。

「妙だな。記憶によれば、この辺りは確か王国軍の宿舎が置いてあった筈だが」
「それ何時の話です?今じゃ王都は人口の増加で、中央東地区は軒並み臣民の住宅に置き換えられていますよ。まぁ一部軍施設が残っている所もありますけど、大半が北部に集約されています」
「王都も随分と変わったものだ」
「玉座を囲む連中は今も健在ですけど」

 皮肉っぽい口調で言うパウリナ。彼女は暫し主人のロープに隠された横顔を見詰めて、意を決したように話し掛けた。

「で、どうします、御主人?思うにそろそろあたしら、別れた方が良いんじゃないですか?」
「・・・如何いう事だ」
「あたしはちょいと今から、自分の塒に戻って仕事準備に取り掛かろうとしていまして。ほら、盗みのやつです。ですから御主人の仕事には付き合えそうにも無いんですよ。だからいっその事、互いに迷惑を掛けないように此処からは別行動って事にはーーー」
「断る」
「へっ!?な、なんでですか!?」
「お前がいきなり饒舌に話し掛けるからだ。疑わしさ満載だぞ。そんなに俺が嫌いか?」

 うっ、と言葉に詰まるパウリナは目を泳がせながら彼女にとっての上手い言い訳を探していく。うんうんと唸りながら彼女が遊泳中の目に留めたのは、男の腰に携えられた一振りの剣であった。幼さと凛々しさが相混じった顔が歪む。

「だ、だって御主人、それ持ってくるって事は何時か使う時が来るって事ですよね?」
「あぁ、一応その心算だが」
「・・・つまり、やるって事ですか?」
「・・・血は嫌いか?」
「っ!」

 嫌悪感に浸っていた顔をパウリナは驚かせる。そして不思議な事に、今までまともに目を合わせた事のない主人の瞳にがっしりと視線を捕えられた。鳶色の鋭い、研ぎ澄まされた槍の矛先のような瞳が彼女の心中を射抜いている。

「エルザ。お前も盗賊の端くれならば一度は見た事が在る筈だ。赤く迸る血や、剣筋にまとわりつく人の肉を。この時勢、いや、時勢は関係ない。人間であるならば、身体に通う赤い血が体外へ流れるのを何度も見なければならない。己のか?他人のか?どちらのものであっても、俺達は流血無しに生きられないんだ」
「・・・まぁ、そうですね」
「・・・嫌いな言葉で表すがな、諍いや偶然で血を流す事は決して逃れられない運命のようなものだ。俺達定命の者では如何する事の出来ん問題だ。・・・だからこそ俺達はこれから逃れてはならないのだ。これこそが俺達が生きる道に潜む、棘のような代償なのだからな」

 夜闇に潜められた声は男の低い声も手伝ってか、一顧して心に残るほどの重
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