第百五十九話 巨寺その十三
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「ですから」
「守るだけが戦ではないからのう」
「はい、攻めてもです」
そうしてもだというのだ。
「守りになります」
「そうじゃな、むしろ攻めてこそじゃな」
「攻めが最もよい守りです」
長可らしい考えだった、織田家の中でも猛者と知られている彼の。
その十字槍を手にしてだ、そのうえで原田に言うのだった。
「では」
「うむ、行くぞ」
「是非共」
こう話してそしてだった。
原田と長可は共に軍勢を率いて攻める、今まさに砦を攻めようとする雑賀衆にだ。
それを見てだ、雑賀はすぐに鉄砲を構えようとしたところですぐに言った。
「止むを得ん、ここはじゃ」
「はい、ここはですな」
「軍勢の一部を」
「半分じゃ」
その数と勢いを見てだ、雑賀はこう断を下した。
「半分をあちらに向けてじゃ」
「そしてですか」
「まずは足を止めてですか」
「うむ、半分じゃ」
それだけの数を向けるというのだ。
「それだけでは砦を攻め落とせんがな」
「攻めてくる敵は防げますか」
「とりあえずは」
「うむ、止めてじゃ」
そしてだというのだ。
「相手が退いたところでな」
「あらためて、ですな」
「砦を」
「攻める。ただわしは」
雑賀は砦の方と攻めてくる敵を見た、その双方を見ての言葉だ。
「少し待つか」
「待つ?」
「待つとは」
「うむ、どちらが厄介かわからぬ」
今はというのだ。
「だからな」
「とりあえずはですか」
「双方を御覧になられますか」
「そうする、そして勢いのある方にじゃ」
敵のだ、そのある方にだというのだ。
「わしが向かう」
「わかりました、それでは」
「今は」
「そうする、ではな」
こう話してだった、そうして。
雑賀は今は兵を二手に分けてそのうえで織田家の軍勢と対した、鉄砲が砦にも軍勢にも撃たれる。だが。
その勢いは弱い、二手に分けたせいだ。
砦を守る中川もその勢いの弱にほっとした顔で言った。
「若しこれが倍ならな」
「敵の数がですな」
「特に鉄砲の」
「うむ、ひとたまりもなかった」
こう言うのだった。
「このままならな」
「そうですな、やはり強いです」
「これが雑賀衆ですか」
「この敵の勢いでは」
「噂以上ですな」
「そうじゃな、これではな」
陥ちていた、そうなっていたというのだ。
それでだ、中川は言うのだ。
「勝三達がいてよかった」
「若し中川殿だけならですか」
「そうであれば」
「雑賀衆、噂通りの強さじゃ」
確かに二分されている、だがそれでもだった。
雑賀衆の勢いはかなりのものだ、半分だからまだ何とか対することが出来て反撃も加えられていたのだ。
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