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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1の2:社交的舞踏会
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いていられないくらいでした。あんな群を抜いた美女は生まれてこの方初めて見た気がします・・・コーデリア王女やアリッサさんを除いて」
「そうか。なら正面から言ってやれ。デュジャルダンの娘辺りなら確実に落ちるぞ。あれは最初から本気のようだからな」
「あ、あははは・・・それは雰囲気で分かります・・・」

 ちらと振り返り彼女を見遣る。胸元に手を当てて無意識に双丘を引き寄せている格好をしており、胸奥の火を焚き付けるものがあった。 

「だが本気なのはあの者だけではないぞ。ミシェランの娘もロックウェルの娘も、お前を射止めようと色香を放っておるわ」
「・・・親の命を受けて唯々諾々、といった風には見えないんですが」
「当然ではないか、知らんのか?あ奴らとて栄誉と富に溢れた貴族の娘ぞ?己が果たすべき義務や背負うべき責務の重さなど、とうの昔に知っておる。あ奴らはそれを、恋路を交えて果たそうとしているだけだ」
「・・・恋路ですと?」
「お前、案外鈍感だな。周りの者共を見てみよ」

 常と変わらぬ冷ややかな声と共に彼は命を下す。慧卓が会場内を改めて見渡した。親しみを持って多くの貴き人々が会話を弾ませ、美酒を口に運んでいる。年嵩を重ねた男に色とりどりの美の数々が侍り、気分を盛り上げているようだ。
 其処で漸く慧卓ははっとした。男達に圧倒的に若さが足りていない。

「聡いお前ならば分かるな?若い男が少ないであろう?」
「・・・もしかしてこの宴、男の場合は参加するまでには幾多もの壁があると?差し詰め、功績の差や、階級の差とか」
「ふん、やっと分かったか。・・・そうだ。此処に参加する男達は皆、それぞれの責務を長年全うした者であり、或いは短期に著しい栄達を重ねた数少なき者達だ。前者は言うに及ばず、後者に至っても、既に身を固めている事が多い。だからこそ、若く、そして独り身のお前に様々な色を乗せて目を送る。極自然な事だ」
「ぇぇぇ・・・責任重大だなぁ・・・」

 厭な気分を飲み込むように葡萄のジュースを啜る。芳醇な香りを楽しむ慧卓の顔には言葉ほどに切羽詰ったような感情は表れては居らず、寧ろ気楽さすら見えている。 

「・・・そういう割には、随分と落ち着いた様子だな?あ奴らでは食指が動かんか?」
「いや結構動いてます・・・正直、あのまま乗せられるのもありかなって思っていました。もしあの人達の誰かと結ばれたら、それが誰であろうと幸せな生活を築いたいとは思っています・・・けど、なんかしっくりこないんですよね」
「・・・」
「言葉には出来ない思いっていうか・・・そうですね、ぴったりと嵌る感じの、相性って奴です。それを俺は、此処には居ないあの人に感じたんです。・・・まっ、唯の一目惚れか、唯の気の迷いかもしれないですけどね」
『コーデリア王女殿下、御入場で
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