暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第三章、その1の2:社交的舞踏会
[7/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の味方ですよ」

 淡い笑みを零して語り掛ける女性に元気を取り戻したか、アリッサは常の凛とした笑みを作って慧卓に振り返った。 

「では慧卓殿、私は行ってくるぞ」
「頑張って下さい・・・アリッサさん」
「あぁ・・・お前もな」

 喜色溢れる少女等の波に足を踏み入れる彼女の背中は、矢張り何処か苦労気味な雲が纏わりついているような気がした。

「失礼致しますわ。貴方が、異界の戦士様?」

 背中から聞こえて来た甘い声に背筋がびっと立ち、一拍の中に緊張を押さえ込みながら、慧卓は凛然とした立ち居振る舞いで振り返り礼をした。 

「・・・はい。御初に御目に掛かります、御嬢様方。私は御条慧卓。此方では、ケイタクと皆に呼ばれております。どうぞ、お見知り置きを」

 顔を向けた彼の前に、三つの美麗な華が咲き誇っていた。一つは豊満な体躯を妖艶な真紅で覆い、一つは気品の溢れる淡い青で己を飾り、一つは綺麗な薄緑で女性的な肉体を隠していた。皆が皆、人並み外れる程の秀麗な美人であり、倫理の箍を外すのを躊躇わせない魅力に溢れているように見えた。
 赤の美女から始まり、青、緑の順で言葉を掛けられる。

「初めまして、ケイタク様。ミシェラン侯爵が次女のユラに御座います。今宵の宴を共に出来まして、嬉しく思います」
「私はシンシア。ロックウェル伯爵の長女であります。お会い出来て光栄ですわ」
「デュジャルダン子爵が長女、オレリアで御座います。噂に違わぬ黒髪に黒眼、とても凛々しいですわよ」
「有難う御座います、オレリア様。貴女の琥珀の瞳こそ、とても綺麗だ。海に浮かぶ月のようです」
「まぁ、お上手です事」

 取って着けたようなあからさまな褒め言葉とて社交辞令の一つなのかオレリアは可憐な笑みで受け取ってくれた。周りの貴族等も幾つか好機の視線を注いでいたが、三つの華が香らせる威圧感に押されたか、はたまた最初からその気がないのか彼女らに混ざろうともしない。その情景に慧卓は一つの謀略の薫りを嗅いだ。

(矢張り狙ってきたか、貴族達?)

 とはいえこれは唯の深読みに過ぎない。爵位のある父君を持つ女性達の言葉を妨げるほど勇気が沸いて来ないというのが、周りの者達の本音であろう。 
 高領の華君は続けた。

「ケイタク様、どうかお聞かせ下さいな。異界の風景やこれまでの旅筋を。そして、ケイタク様の事を」
「ははは、全て語るには今宵一晩だけでは足りませんよ。もっと多くの日数が必要だ」
「ならば私達にお任せあれ。貴族の名誉を掛けて、必ずやケイタク様がお喜びに成られるような饗宴を御用意致しますわ」
「えぇ、楽しみにしております。宴を催される時には是非にも、私をお呼び下さい」
(こうして絶世の美女を侍るのも、結構良いもんだなぁ・・・古(いにしえ)で何
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ