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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1の2:社交的舞踏会
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大柄の二人に掛かれば料理の大半が胃袋に消えてしまうであろう。 
 そんな思いを巡らせていると、葡萄酒を啜るだけであったハボックに一人の女性が親しげに近付いてきた。慎ましい海色のドレスが似合う、温厚そうな顔立ちの女性だ。心成しか、腹部あたりが俄かに盛り上がっているようである。

「此の度は御生還、おめでとう御座います、バッカス様」
「ああ、有難う。君に会うのも随分久しぶりな気がするよ」
「ふふ、私もですわ。たった一月なのに、私こんなに苦しめるなんて、罪な方・・・バッカス様、話の続きはあちらにて」
「そうだな・・・ではケイタク殿、アリッサ殿。私はこれで・・・」
「失礼致します、異界の戦士様、近衛騎士様」

 睦まじき仲を見せ付けながら二人は人垣の中をそろそろと歩いていく。艶治な瞳で貴族の婦人方がハボックをちらと見遣るが、その度にバッカス夫人の言葉にいえぬ威圧感に視線をさっと逸らしていた。

「あの人、所帯持ちだったんですね」
「そうだぞ。奥方殿は二人目を既に授かっている。後で聞いてみるといい」
「そうですね・・・アリッサさん、若い御令嬢方が来られたのですが・・・」
「・・・・・・やばいわ」

 力無く小さな嘆息を零してアリッサが慧卓が見遣る方向へと目を向けた。いつぞや見た赤髪のサイドテールの麗人に連れられるように、慧卓よりも二つか三つほど歳が若い、六分咲きの華のような美少女達が群れていた。
 赤髪の麗人が同情気味に苦笑を浮かべる中、一人の少女が彼女の横から声を掛けた。

「アリッサ御姉様・・・お待ちしておりました」
「お、お前達・・・どうしたのかな?」

 引き気味になりながらも笑みを浮かべるアリッサ。見た目からして明らかにげんなりとしているのに、少女達からは憧れの女性が自分達を心配して小さく笑んでいるとしか見えないのだ。 

「私達、ずっとずっと御姉様の御無事をお祈りしておりました・・・」
「御姉様の事を思う度に、胸が締め付けられるかのようで・・・この一月は、とても辛い日々でありました」
「ですが今では御姉様はこうして御無事な姿を私達の前に見せている・・・それを見れば私共は、歓喜に胸を震わせてしまうのです・・・」
「ですから御姉様!」
『御姉様!!!』
「わ、分かった分かった!お前達は良く耐えた!だから、今宵の宴はお前達に付き合ってやる・・・」
『きゃあああああっ!!!』

 黄色い悲鳴が鼓膜を震わせる。周囲の諸人は呆れ紛れの表情で頸を横に振り、それを露知らず若きの至り全開の少女等は手を取り合って喜んでいるようだ。肩をがっくりとさせるアリッサに対し、赤髪の女性が声を掛けた。

「最後までお付き合いします、姉上」
「すまない・・・また迷惑を掛けてしまったな」
「何を仰るやら。私は何時でも姉上
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