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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1の2:社交的舞踏会
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た。今宵は宴だ。愉しく慎ましく行おうではないか」
「・・・陛下、あの方々を」
「ん?おお、そうであったな。今宵は諸君等に紹介したい者達が居る・・・あぁ、レイモンド、頼むぞ」

 王はふかふかの玉座へと座り込んで黙する。レイモンドは一瞬彼を見遣った後、賓客等に向き直って言う。

「皆様方は既に御存知だと思うが、一月前に王都を出立した鉄斧山賊団討伐隊が、昨日の夕刻、無事に王都に帰参した。そしてその目的通り、下賎なる山賊団は王国の威光と栄誉の前に、そして主神の御覧の下、為す術も無く撃滅された。我等は王国に更なる栄華と平和を齎したのだ」

 言葉を一度切って、レイモンドは大扉の向こうに目をくれた。

「今宵の宴はその類稀な活躍を為された武人等をお招きし、その勇気を讃えたい。紹介しよう、ハボック=ドルイド第三歩兵団大隊長殿、アリッサ=クウィス近衛騎士殿」
「気合だぞ、ケイタク殿!」
「雰囲気に飲まれぬよう、お気をつけを」

 両名はそう告げた後、開門する大扉の内側に広がる、魑魅魍魎の綺羅綺羅とした世界へ足を進めていく。大きな拍手と、そして何故かうら若き黄色い悲鳴が聞こえて来た。 

「流石所帯持ちね、いい余裕っぷり」
『そしてその折、この『セラム』に顕現された異界の方々も御紹介したい。豪刃の羆、クマミ=ヤガシラ殿』
「じゃぁ、お先に失礼」

 熊美はそう言うと、歳相応の渋みのある精悍な表情を作って扉の内へと消える。聞こえてきたのはどよめきと歓迎の声。王国の羆の風貌と威風は貴族をも驚かすものであるようだ。
 レイモンドは最後に残った慧卓を見て、それまで以上に張りのある声で言う。

『そして、異界の若人、ケイタク=ミジョー殿』
「ぁぁぁっっ、もう如何にもなっちまえ!」
 
 自分の両頬を軽く叩いて、慧卓は開き直って王の間へと入っていく。方々から注がれる視線はまるで槍衾のような鋭さを湛え、無遠慮なまでに慧卓の肌をちりちりとさせている。

『ほう、あれが件の者か・・・未熟そうな目付きだな』
『どうかな。執政長官殿や陛下の視線を受けて動じる素振りも見せておらん・・・中々に豪胆な奴ではないか』
『・・・お母様、あの人は?あの若い御方は?』
『異界の若き戦士殿です。興味が沸きましたか?』
『・・・えぇ、少なからずは沸きましたわ』
『不遜な顔付きよ、まるで悪戯好きの童ではないか・・・矢張り異界の者は好かんわ!』
『・・・・・・綺麗な黒眼・・・素敵』

 色々と囁かれているようだが慧卓ははっきりと聞いていなかった。彼の意識は既に玉座の前にて貴族側を向いて整列しているアリッサ等を通り越し、玉座の国王とその脇に控える執政長官に向けられていた。能面である一方で厭に光を湛えているように見える国王の顔付きと、半ば同情気味に細
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