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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1の2:社交的舞踏会
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る事があって?』
『そのような事などありませぬわ。強いて申せば、百合の花の臭いは、慣れぬまでが大変と思い出したまで・・・』
『うふふ、面白い事を言いますわね・・・』

 華の間に飛び交う毒牙もまた社交の愉しみの一つである。大扉の隙間からその光景を覗いている熊美はにやにやと笑みを浮かべていた。

「大分盛り上がっているわね。準備はいいかしら慧たーーー」
「無理ぃ!!!無理無理無理無理、無理ですって!!!」

 盛大にてんぱる様子を見せる慧卓。余裕の一字も感じられぬ表情をしており、学ランにも似た貴族の正装が醸し出す気品を台無しとしている。
 彼の他に扉前に待機するのは数名。彼と同じく祝宴の華であるハボック、アリッサ、熊美。そして扉を警護する近衛騎士だけだ。男性と漢においては体格の良さを強調するように赤いマントを羽織り、下にはシンプルな黒い礼装を着用している。
 紅一点であるアリッサは女性である以上ドレスを着るのを予想していたが、今日の彼女は端麗さと凛々しさを強調した蒼を基調とした正装に身を包んでいるようだ。それは女性が望む白馬の王子のようでもあり、中性的な美を顕す彫像のようでもあり、或いは女性歌劇団の男役ともとれる美しさであった。
 そんな彼女は今、近衛騎士の前で緊張と焦燥でにっちもさっちもいかなくなっている慧卓をジト目で見据えていた。 

「貴方は・・・昼時の威勢は何処に行かれた?」
「そそそそ、そんなものお空の彼方にダイビングですよ!!だって見てよ、あの人達のヤバイ顔付き!!」
「・・・別段、変わった顔をされている方は居りませぬぞ」
「瞳です、瞳!心の底から愉快げな人なんて誰一人としていないでしょう!?」
「それは・・・言われてみれば確かにそうだが・・・今此処で気にすべき事ではないだろう?」
「観念なさい、慧卓君。何時も通りに開き直って、堂々と構えれば良いのよ」
「そうですぞ。此処に来て一々細かい所を気になさるよりも凛然となさるべきだ。待つべきものは全て待っている。後は貴方の決意次第なのだ」
「そう言われてもなぁ・・・」

 身体を伸ばしたり縮めたりして扉の隙間から広間を覗きながら話す四者の姿はそれはそれで間抜けな格好であり、騎士等が遠い目で警護に当たっていた。 

『紳士淑女の皆様方、ご静粛にされたい』
「っ、始まりましたな」

 四者は扉からさっと離れて身嗜みを整え始める。部屋の中では玉座の近くに立った執政長官が衆目に時を告げていた。

『国王陛下の御入場であらせられる』
『ニムル=サリヴァン国王陛下、御入場!』

 一拍を置いて玉座の後ろ、臙脂色の幕の内から国王が姿を現す。出席者等が温かな拍手万雷で出迎える。幾秒かそれを受け取った国王が、手を翳して拍手を制した。

「皆、良くぞ集まっ
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