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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1の2:社交的舞踏会
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 その宮殿では今、貴族による、貴族のための豪勢と気品を極めた宴が催される寸前であった。 
 宴の場は宮殿の王の間。普段は国王に対して政務の報告をしたり、様々な儀式が行われる神聖にして厳粛な間である。それが今や、王国随一の職人の手により絢爛な宴会場へと変化を遂げていた。

『やぁ、久しぶりだな。奥方は御一緒ではないようだが、息災かな?』
『ああ、格段の病も無く床についているよ。この調子であれば、来月辺りにでも次の子が安泰に生まれるだろう』
『そうか!これで二児の父親となるな、おめでとう』
『有難う』
『もし生まれて首が座る様になったら、是非私の妻にも抱かせてくれないか?あれももうじき、子を宿しているかどうか分かる時期だからな・・・それに俺も父親になる決意というものを確かめてみたいんだ』
『構わないさ。何せ朋友の頼みだからな』

 キラキラと輝くシャンデリアの傘の下には、栄耀栄華を字に顕したかのような人々が話しの華をがやがやと咲かせている。
 男達の表情は自信に満ち溢れており、階位の上方に座す者としての責務を負った漢の顔をしている。背に羽織るマントやそれを留める金銀の飾り紐が美麗であり、中には小洒落た感じの鳥の羽を付けた帽子を着るものもいた。
 女性陣は赤に黄・青・白など、目もあやな綺麗なドレスを身に纏っている。若きほど純真さと優美さを描く白や水色が好まれ、歳嵩を積むほどに美麗さと妖艶さを描く赤や紫などが好まれているようだ。優雅に話し込む彼女達の姿は、まるで一枚の中世の絵画そのものとも思えるほど。

『・・・辺境は随分と荒れているようだ。ドワーフは大人しいのだが、北のエルフ共はな・・・なんとかならぬものか』 
『今奴らに表立って反撃すればそれこそド壺に嵌るというもの。武で解決できぬ以上は、対話による解決こそ、王国の第一の利益ではないか』
『ふん、いけ好かぬ!力に依って奴らを押せば良いではないか。それこそ、三十年前と同様にな』
『それを行ってヨーゼフ国王は兵を大いに失ったのだぞ。奴らの軍事的才覚を侮るな』
『むぅ・・・昔は昔ではないか』

 広間の中央に大きな空間を設けており、人々は其処で話し込んだりしているようだ。宴は社交場。故に此処では手塩にかけて美を育んで来た貴族の娘達も参列しており、彼女達は老を重ねつつある男達に向かって瑞々しき色香を放っていた。 

『今宵は娘さんも御一緒なの?昔以上に綺麗になったわね』
『えぇ、今年で十八となりますわ。我が娘ながら、月下の百合に勝るとも劣らぬ美しさですわ。御覧なさい、男達の視線を釘付けとしておりますわ』
『ふふふ、純朴な方々ですこと。見目は貴方にそっくりね。百合とは、中々に御上手な喩えではないですか』
『あら?何処か他意があるかのような口振りですこと。何か気にな
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