第三章、その1:冷え込んだ拝謁
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る貴殿には堂々と、胸を晴って欲しいのだ。・・・我が思い、聞き届けてくれるか?」
「・・・はっ!閣下の御子息と共に戦地に立ちし事、誇りに思います!」
敬意と謝意を込めて、慧卓は凛々しき敬礼を返す。ブルームは一つ頷くと、非礼を詫びるように国王に向かって頭を下げた。
「お話を遮りまして、申し訳御座いません」
「構わんで良いぞ・・・良き心構えだな、ブルーム。・・・では次は羆殿かな?鉄斧のカルタスは・・・どのような人物だったかな、レイモンドよ」
「はっ。冷血無比の民殺しであり、豪腕の斧使いに御座います。ついでに申せば、武の何たるかを弁えぬ蛮人でも御座います」
熊美の冷たき視線をするりと受け流してレイモンドは言ってのける。
「ふむ、そうか。ではクマミよ。そちは如何にして敵と戦い、これを打ち伏せたのだ?」
「はっ。ケイタクが砦の門を破壊して双方が交戦していた折に、敵の棟梁、即ちカルタスが一騎討ちを申し出たのであります」
「ほう、一騎討ちとな?」
「はっ・・・それに私が応じました」
レイモンドはそれを聞いて静かに眉を顰める。彼は国王に向かって言う。
「陛下、一つ彼に尋ねたき事が御座います」
「ん?良いぞ」
「有難う御座います。・・・クマミ殿、何故に貴殿は意地汚い、下賎な蛮人の申し出を引き受けたのだ?一気果敢に掃討すれば良かったではないか?」
「かの者、申し出の際、『王国の樫を仰ぐ者として、亡きクウィス男爵殿の名誉にかけて誓う』と申されました。『国を慕い、愁い、仰ぐ者に貴賎は無く、そして格差も無い』。これは黒衛騎士団の副団長の言葉ではありますが、正しく彼の言葉は正鵠を射ていたのです。王国の正義、力、そして臣民の心。それらを量る秤は主神の御心をおいて他に無く、故に我等は一つの血、人間の血によって結ばれた種族であるのです。だからこそ彼らが口にする言葉にも平等に価値があり、其処に大きな意味を認めるべきである、私はそう考えております。
・・・また、王国に忠義を貫いた男爵殿の名の下に行われる決闘とあれば、男爵殿を親しく戦を生き抜いた私と致しましては、受けずには居られぬと思った次第でありました。・・・これが私が、決闘を引き受けた理由に御座います」
「・・・平等・・・そしてクウィス、か。得心した」
レイモンドは無感動な瞳のままに口上に傾注し、一つ国王に向かって頭を下げると、大人しく言動を引っ込めた。
口を挟まぬ余裕を見せていた国王は待っていたとばかりに熊美に話し掛ける。
「それで、そちは一騎討ちを引き受けて、これを勝利したという事か?」
「はっ。神官殿や王女殿下、指揮官殿の御立会いの下、勝利致しました」
「ふむふむ・・・得物は何を使ったのだ?」
「我が身程もあるかというほどの、大剣に御座います」
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