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王道を走れば:幻想にて
第二章、終幕:初旅の終わり ※エロ注意
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「見ればすぐに分かるさ」

 言葉を言って間も無く、執事は実に素早き動きで所望の品を取り寄せてきた。

「お待たせ致しました。此方が」
「あぁ。さぁキーラ。お前への贈り物だ」

 ミラーはそれを己の胸の前で広げる。途端にミントの顔が輝かんばかりに花咲いた。

「あらまぁ!綺麗なドレスですこと!貴女にピッタリじゃない!」
「こ、こんな高価なものを・・・い、いいのですか、お父様?」
「金銭の事は気にするな。親から子供への愛情に、どうしてそのような下世話な事が関係しようか。素直に受け取って、そしてその花姿を私に見せてくれ」

 父君から差し出されたものを受け取って、キーラは可憐な笑みを見せて喜んだ。
 彼女が胸の前に広げて己の体躯に合わせるのは、優雅さと可憐さを併せ持った淡い桜色のドレスであった。夜を歩けばそれは一輪の山茶花のように色を魅せ、光の下では一点の恒星のように煌く存在となろう。衆目の中を歩けば一際美麗さを見せ付ける容姿であるキーラが着れば、それは佳麗がドレスを着て歩くというようなものであり、貴賎の男達の視線は釘付けとなろう。

「宮中の晩餐会が明日ある。麗しき美貌のお前ならば、きっと騎士や他の貴族の心を射止める事態だろう。このドレスを着て、お前が想いを寄せるような騎士を連れてきてくれ。家族の一員として、歓迎しようではないか」
「もう、お父様ってば・・・ふふ」

 可愛らしく笑みを零すその姿は、気品と優雅さを飾り纏う貴族の娘の姿ではなく、父君の愛情に喜ぶ一人の少女のそれであった。
 団欒の光景を作っていく三者を、戸口の近くで控えている執事は醒めた視線で見詰めていた。

(ふん、哀れな家族だな。たかがドレス一着であそこまで喜ぶとは。いよいよ落ち目か、この家も?)

 男は安易な将来が見えてしまう主人に悟られぬよう、穏やかな表情のままに新たな仕え先を考え始めていた。  

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