高校2年
第二十二話 やっぱり
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第二十二話
(さすが海洋だな。あのピンチをファインプレー二つで切り抜けてくるとは。この水面で一番甲子園出てるチームは伊達じゃないよ。)
8回の表の守りに就いた宮園は焦りを隠せない。何とかして先ほどの回で追加点が欲しかった。
下位打線に珍しい長打が出て、絶好の流れだったのに引き離す事が出来なかった。これは痛い。
(この回を切り抜ければ9回は下位打線。鷹合の一辺倒なピッチングでも抑えられる可能性が出てくるんだけどな。)
この回の海洋の攻撃は3番から。
海洋応援席も逆転の気運が高まる。
<3番レフト松本君>
打席に入った松本は先ほどセーフティバントで出塁している。2点ビハインドの8回、形振り構ってなどいられない。
(とりあえず出て、江藤につなぐ事や。あいつなら何とかしてくれる。)
鷹合の試合終盤にきても唸りを上げ続けるストレートに対して、7回の9番打者のようにカットカットで粘る。
3番としての打撃より、出塁にこだわる。海洋にとっては勝つ事こそが何よりのプライドの基盤だ。
「ボールフォア!」
「よっしゃーーっ!」
根負けした鷹合から四球を貰うと、松本はヒットを打ったかのように喜ぶ。試合の中での価値はヒットも四球も何も変わらない。
<4番ショート江藤君>
無死一塁。
7回に続いての先頭打者出塁の状況で打席に入るのは6回にホームランを放った4番の江藤。
(8回だからな。ここでもう一度ゲッツー食らうのは嫌だろう。ここは4番の江藤でも……)
捕手の宮園は海洋ベンチに目をやる。
高地監督は腕組みしたまま微動だにせず、険しい顔をグランドに向けていた。
(……バントはないか。それなら、内のストレートで攻めよう。ゲッツーになりにくい右方向を狙ってくるはずだ。詰まるぞ。)
宮園はインコースに寄る。
ドッシリと構える江藤の威圧感と、インコースに寄った宮園を見て、サードの飾磨も少し後ろに下がった。
コツン!
「なっ!?」
「ウソやろ!」
初球から江藤はセーフティバントを仕掛けた。
少し下がった飾磨の前を狙い、インコースのストレートを転がす。
目論見通りのバントに飾磨が精一杯ダッシュして一塁に投げるが、江藤はズングリした体型の割に足が速かった。悠々セーフとなり、無死一、二塁となる。
(せっこ!海洋の4番がセーフティかよ!)
裏をかかれた宮園とは対照に、一塁ベース上で得意気なのは江藤である。
(足ば使ってかき回すんが海洋伝統の機動力野球よ。走姿顕心、打つだけが攻撃力やない。)
海洋ベンチでは高地監督がよしよし、と言わんばかりに頷いていた。
(ノーサインやったが、2年の癖によう考えよるわ。ワシらは自分勝手な帝王大の野球とは一味も
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