第二章、その6:王都
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朋友であったニムル大臣が国王と成った」
「しかしニムル国王は薄志弱行にして親帝国派。唯々諾々と帝国側の要求を呑み、国政の一切を帝国から遣わされた宦官達に信託。此処十年近くは、実際は彼らが国を治めている・・・そうでしたよね?」
「あぁ、そうだ」
「思ったんですけど、今の王都はどんな感じなんです?役人達の収賄や汚職、民草達への侵害というのは?」
「確かに存在している。だが主要な街には裁判所が設けられ、治安維持のために憲兵隊も各街々に駐屯し、警邏に当たっている。お陰で秩序維持に支障を来す事は無く、街を脅かすといった程に汚職が多発している訳でも無い。ヨーゼフ国王の賜物だよ」
感慨を受けるように紡ぐアリッサであった。彼女は表情を引き締めて続ける。
「ですが御両名は充分お気を付けを。憲兵隊の一部には職権濫用の多い者達が居り、度々に住民に危害を加えているようです。お二人は異界の者とはいえ、彼らの目に留まれば等しく暴虐の対象となるやもしれません」
「私は大丈夫そうだけど、慧卓君はね?」
「そうですね。一応街を歩く時は人目の多い場所を選ぶように心掛けます」
行軍する人並みの中で一際華奢な体躯であろう慧卓は重々しく頷いた。それに向かってアリッサは更に言った。
「王都に付けば様々な民がいる。貴方が先ず真っ先に気を付けて欲しいのが、エルフやドワーフ達への配慮だ」
「・・・両民族は王国内の内乱でエルフが改革派、ドワーフが保守派に分かれて対立。帝国との戦争が勃発した途端に手を引いたけど、今でもその怨恨が続いている・・・」
「彼らの前で迂闊に歴史を口にしてはいけませんぞ。我等王国兵といえども、彼らの怒りを抑制する事や、諍いの仲裁などは困難を極めますからな。それこそ、怪我人覚悟で挑まなくてはなりますまい」
「特に王都では力者のドワーフが出稼ぎに多く来ている。旧保守派、つまり軍務大臣派を侮蔑したり、揶揄するような事は無いようにね」
「・・・ドワーフかぁ・・・力持ちって印象があるんですけど、やっぱりそうなんですか、熊美さん?」
「其の通りよ。人間のそれよりも何倍も膂力に優れているわ。彼らにとっての唯の戯れあいが、人間にとっての人殺しとなるくらいにね」
「あはは・・・すごいですね」
慧卓の中でプロテイン常用タイプのプロレスラーが高校生相手に、クラッチスラムからバックドロップ、ジャーマンスープレックス、そして止めにパワーボムを叩き込む映像が映し出された。如何考えても致命傷を飛び越して即死技である。
引き攣った引き笑いを零す慧卓を安心させるように、二人の大人は揃って言う。
「ま、何はともあれ実物を見ない事には始まりませんな。ようはまともに相手にしなければよいのです」
「えぇ。口喧しく言っちゃったけど、まぁ大丈夫でしょう。貴方は
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