第六十二話 快勝その二
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「何もないとね」
「阪神の試合観てるか」
「お父さんも阪神ファンだから」
そうしているだろうというのだ。
「やっぱりね」
「そうなるのね」
「虎党だから」
「私もだしね」
無論里香もだ、彼女もまた他の家族やメンバーと同じくなのだ。
「お兄ちゃんお姉ちゃんも」
「つまり皆がなのね」
「里香ちゃんのお家も」
「そう、お兄ちゃんもお姉ちゃんも今ここにいないけれど」
「それでもなのね」
「試合観てるのね」
「絶対にね。今日はそれしかないから」
何につけてもだ、まずは阪神だというのだ。
「今頃は私達みたいにしてるわ」
「試合がはじまるの待ってるんだな」
美優は画面に映る甲子園のグラウンドを観ながら応える。ライトに照らされているライトグリーンの外野とダークブラウンの内野の対比が眩しい。
「そうなんだな」
「そうだと思うわ」
「一緒だな、本当に今は」
「うん、場所は違えどね」
観ているもの、心に抱いているものはというのだ。
「一緒よ」
「そうだよな」
「あのグラウンドでね」
まさにだ、甲子園のグラウンドでだとだ。琴乃が目を輝かせて言った。
「今からね」
「シリーズね。ただね」
ここで景子は琴乃に応えながらこんなことを言った、その言ったこととは。
「甲子園のグラウンドって」
「グラウンドがどうしたの?」
「ほら、外野は芝生で内野は土じゃない」
「ええ、甲子園はね」
「こうしたグラウンド最近減ったわよね」
ここで景子が言うのはこのことだった。
「そうよね」
「ええ、甲子園はね」
「こういうグラウンドって実際はね」
「少ないわよね」
「ええ、そうよね」
「前は多かったらしいけれどね」
琴乃は過去のそれぞれの球場のことを話した。
「今はね」
「少なくなったわよね、今は外野も内野も芝生だから」
「そうした球場がね」
「主流になったから」
だがだ、甲子園は今でもだというのだ。
「甲子園の土、あるわよね」
「あれはなくせないわよね」
甲子園の土は阪神タイガースだけではない、高校野球にも関わってくる。甲子園の土は彼等にとっても思い出になるからだ。
「どうしても」
「だから必要なのね」
「そうよね。ただね」
「ただ?」
「甲子園の土って」
景子が今言うのは野球とはまた別のことだった、それは何かというと。
「ミミズ多いのよね」
「あっ、そうらしいわね」
彩夏は景子の今の言葉にすぐに応えた。
「甲子園はね」
「昔からミミズ多いっていうわね」
「だから下に追い払う為に電流流してるって」
そうしてだ、出て来ない様にしているのだ。
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