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王道を走れば:幻想にて
第二章、その4:甘味の後味
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全ては男の正義の為に!!!』
「なにが正義の為にかしら、貴様ら?」
『......アッオー』

 絶望的な表情を浮かべて冷や汗を垂らす二人。壊れかけの人形のようにガチガチとして後ろを振り向く。一分の気配を読ませず、まるで蜃気楼のように突如として熊美が其処に立っていた。

「くっ、クマ殿...屋台にいたんじゃ?」
「バッカス殿に頼んで少しの間代わって貰っているわ...さて貴様ら、どうやってお仕置きしてやろうかしらねぇ?まぁそんなの決まっているわ。来なさい、漢と漢女の世界を魅せてあげる...」
『い、いやだあああああっっっ!!!!!』

 むんずと襟首を掴まれて引き摺られながら、二人は哀愁の漂う悲鳴を漏らし、無双を誇る怪力のままに裏路地の奥へと姿を消していく。此の日、祭りの裏側に不気味な悲鳴と雄叫びが木霊して、耳にした市民を酷く怯えさせたという。




「これは......なんと面妖なっ...」

 祭事を愉しむ者に格差は無い。それが貧富であれ、手にする職の違いであれ、なんであれ。
 この者、王都の中枢に冷徹の目を巡らす執政長官の手駒、小太りの中年男にとっても同じ様子であった。

(なんだこの円らな瞳は...この愛くるしく、何処か疎ましい表情は一体何なのだ!?)

 手にしたのは一つの御面。祭りに相応しき出し物である。だがその御面、無駄にでかくて丸い顔面、妙に艶光した髪、人をおちょくるようでそれでいて愛くるしさのある瞳と口元など、他の御面と一線を画す魅力を博している。

「...済まぬ店主、一つくれ」
「あいよっ、まいどどうも!ゆっくり被っていってね!!」
「...ほう、意外と手触りも良い...む?面の裏に文が...?」

 かくして男もまたそれを手に入れて面を被ろうとし、其処に書かれた文面に目を奪われる。

『ゆっくりしていってね!』
「ゆ...ゆっくり...?」

 解せぬ文章である。だが其処に書かれた以上、深い意味があるに違いない。でなければ誰の手に渡るかも知れぬこの御面に書く必要が何処にあろうか。
 男はその面を被り、紐を耳に掛けて固定する。面の目の部分に開けられた穴により視界が確保されているようだ。その穴の部分より、男はお目当ての人間を視界に入れた。

「......あれはコーデリア王女...その隣は、異界の戦士か?」

 珍しくも普段着の王女とそれに付き従う異界の若人。まるで唯の恋人のような新鮮さを醸し出しながら街の浮かれ気分に自らを乗せているようだ。だが若人はその一方で時折、周囲に鋭い視線を巡らせる。王女の護衛を兼ねているのであろう青年は、街を往く者に見受けられぬ黒髪黒目、そして輪郭のはっきりとした顔立ちが相まって、凛々しき空気を出している。

(珍しい容姿をした青年
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