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王道を走れば:幻想にて
第二章、その3:御勉強です、確りなさい
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「...晴れてきたな?...雨が続かなければ三日後の朝には出発出来そうだ」
「三日後?...あぁ、そうでした。雨で土がぬかるんで泥沼みたいになってるからですね?」
「そうだ。あんな地面では流石に進軍が出来ん。しかも進軍途中にある地帯は一度大雨が降れば大きな池が出来てしまう。迂回を試みれば魔獣が蔓延る森林地帯に足を踏み入れなければならん」
「此処までの道程が順調なだけに、流石にそんなのは御免被るって感じですよねー」
「全くだ。...池が消えるには二日掛かる。それまで此処で待たねばなるまいて」
「了解です...それでは、授業の続きはまた今度という事で」
「あぁ、みっちり叩き込んでやるから、覚悟しておけ」

 其の時、こんこんと戸を優しく叩く音が鳴った。二人は紅茶を一度キャビネットに置く。 

「どうぞ」

 ぎぃっと戸が開いた。戸を叩いたのはコーデリアであった。アリッサは声を掛ける。

「殿下、雨が上がりましたぞ。これで今夜は雨音に悩まされずに、久方ぶりの温かな寝台に眠る事が出来るでしょう」
「えぇ..そうなのですが...」
「どうなされました、殿下?何かご懸念でも?」
「...っ、強いてあげれば、まぁ、そうなのですけど...」

 僅かに躊躇いを見せた口調を慧卓は初めて聞いた気がする。彼女は今、何処か悩んでいるようにハの字の愁眉を描いていた。アリッサは心配げに問う。言葉の端々に、親身になって心を動かすアリッサの温かみが感じられた。

「殿下、私は殿下に偽りなき、心よりの忠誠を誓った騎士であります。殿下の悩みは、私の苦しみでもあるのです。どうかその可憐な喉で悩みを隠さず、私に打ち明けていただけませんか?」
「王女様、俺からもお願いします。皆、王女様には笑顔でいてもらいたい筈なんです。だから、どうかその悩みの解決を、お手伝いさせてもらえませんか?」

 そして慧卓は和やかな笑みを浮かべてコーデリアの表情の曇りを取ろうとする。彼にとってコーデリアの悩みは最早他人事では無い。彼女の言葉一つで慧卓の此の世界での待遇が決まるため、なるべく好感度を上げておきたいというのが一つ。そしてそれ以上に、目の前で悩み苦しんでいる姿を見せられては黙っていられないというのが大きな理由であった。
 コーデリアは恥らうように両手を背中に回した。

「......分かりました。貴方達を信頼して、これを打ち明けましょう」
「はっ!」「はい!」

 コーデリアは俯き加減の顔をひょいと小さく上げる。頬が赤みを帯びており、視線も慧卓らを合わせようとせずにゆっくりと泳いでいる。訝しい態度に慧卓が疑問符を浮かべた。

「...この」
『...この?』
「...まっ、まち、街の...」
『...街の?』
「甘味処に行ってみたいんです
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