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王道を走れば:幻想にて
第二章、その3:御勉強です、確りなさい
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が神の言葉として王が自らの権利を濫用して臣民を甚振ったのだ。そして臣民がこれに激怒して叛乱を起こす。結果として王朝は壊滅し、新たな王朝の下、政治と宗教を切り離す目的で教会が設立された。神言教会だ」

 慧卓は僅かな驚きを覚えながらカップに芳しい茶を注ぎ始めた。中世というとても閉鎖的で強権的な国家社会では、必然といってもいい形で国の中央に権力が集中して、他の層にある人間を弾圧するものだとばかりに思っていた。況や、此処が西洋中世紀に似た世界であれば王朝こそがその主導者であるとばかりに...。
 だが此の世界は慧卓が知るよりも遥か昔に絶対王政を打破し、政教分離という実現の難易度が高い政治戦略に着手していたのだ。それを行う臣民の心に、慧卓は畏敬の念を思わずにはいられない。
 これが、『そのまま世界は平和に続きました』となるのがハッピーエンドな展開なのだが、アリッサの口振りは依然として重い。待ち受けていた事実は、ハッピーな展開には程遠いらしい。

「設立以来、教会では厳粛に神言教の理念を説いていた。といっても、説教に近い言葉だがな。『盗みは悪である』、『他人を理解せよ』、『己をこそ守るべし』と」
「...教会は初め、確かに民衆の理解と畏敬の念を集めていたんでしょうね」
「あぁ、歴史から読み取る限りではそうなっている。だが時代と共に権力と権益が教会に実っていき、それに悪意を宿す者達が集っていく。切り離された筈の宗教は政治と再び結合し始め、人々への虐げが再来していった。当然、かの巨大な組織に蔓延する歪んだ理念と構造に反旗を翻す者達も現れるが悉く弾圧され、処刑されていった...。しかし七十年前、ついに彼らは大々的な行動を起こす。それが、マイン王国の建国だ」

 慧卓は彼なりの納得を覚える。成程。組織改革に対する進言や行動を疎ましく思うが如く立続けに弾圧を受けてきた改革者達は業を煮やし、遂には武装蜂起すら起こしたという事か。少なくとも政治と密接に関わっていた教会を相手取るとなればそれ相応の覚悟と武装、そして流血は必須であったに違いない。その場に召喚されなくて良かった。

「偉大なる建国者達、そしてそれに続く今の王国臣民は、いわば『革新派』だ。冷えた溶岩の如く硬直してボロボロとなった教会の理念を正そうとして、彼らから独立し、大陸の東側に国家を形成している。主神の御言葉を曲解して広げる不敬者を正す、正統なる国家だ」
「あー、そういう事ですか。とすると、大陸の西側にある神聖マイン王国は、いわば腐敗した『保守派』の集まりですか?」
「聡いな、其の通りだ。奴らは未だに教会の権益と権威に依存し、ふざけた事に己を神聖と名乗っている。神の聖なる御言葉を発する、正統な国家とな。冗談ではないよ...」

 ぎりっと歯軋りをするほどにアリッサの口振りは熱を増していっ
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