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王道を走れば:幻想にて
第二章、その3:御勉強です、確りなさい
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て、そそくさと茶の準備を始める。お湯と茶葉を用意してくれている辺り、店主は中々に気遣いのきく人間だ。
 アリッサはジト目で彼の背を見遣り、そして寝台に両手を突いて、足をぶらぶらさせながら話出す。スルメ味の歴史談義だ。

「古くは数百年近く前、この世界で最初の王朝が誕生したといわれている。その確たる証拠が無い。だが成立当時の遺物らしきものが大陸の彼方此方で発見されている事から、最初の王朝はかなり大規模に支配を広げていたのが明らかとなっている」
「そして、何時の間にか分裂する羽目になってしまうんだとさ」
「まぁ、簡単にいえばな。情けない話だろう?」
「いえ、俺達の世界でも昔っから似たようなもんですから。同じ人間ですよ?」

 教科書の中でも、小説やゲームの中でも、ましてや今の現実でも同じだ。どんな理由があるかはちっとも知らないが、集団は大きくなっては分裂してを繰り返す。どこでも世界はそういうもんだと、慧卓は気楽に考えながらほろ苦い色をした茶葉を茶漉しに入れる。

「...ケイタク殿の言う通り、王朝は幾度となく分裂し、時を置いては結合し、そして分裂、結合...その流れを繰り返す。そして七十年前に二つの国家が成立する。それがマイン王国、そして神聖マイン帝国だ」
「何故二つともマインを名乗っているんです?」
「マインとは『セラム』で最初の王朝を築き上げたとされている、グスタフ卿の名字なのだ。それに肖(あやか)って最初にマイン王国が、序で『我こそが真の統治者である』と神聖マイン王国が建国された」
「成程、両者とも建国の土台は同じ訳ですか...」
「其の上に築かれたものは大いに違うな。前に言ったが、神聖マイン王国の奴らは邪教の群れだ」

 ぶらぶら加減の足を止めて、アリッサはベッドの上で胡坐を組む。 

「私が彼らを邪教と呼のには大きな理由がある。宗教だ」
「...国家間で、宗教対立とかあるんですか?」
「...紅牙大陸には大きな宗教が根を張っている。『神言教』だ」

 アリッサは静かに語っていく。眉間の皺が知らず知らずに内に寄せられているのは、この問題が彼女の頭を酷く悩ませているからであった。

「グスタフ卿が建国の宣誓をなされた時、彼は主神、『イサク』の心を己の心臓と脳髄に宿し、その偉大なる御心を広場で叫んだという伝説がある。以来国王の口から出る言葉は、主神の御言葉と同じであり、人々は王を通して主神を崇拝するようになった。これが神言教の始まりだ」
「成程。民衆が崇め奉る主神の言葉を国王が発し、民衆は国王の其の言葉を崇拝する...それはいわば神と国王の言葉を同一と見る事に相違ない。故に、王の権利は神から付与されたと同じ...王権親授か」
「其の通りだ。だが直ぐにその欠点が露呈する。グスタフ卿の孫の代、つまり三代目の国王
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