第T章:天使炎上編
03:第四真祖、監視役、番外真祖、あと王女
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めくその少年は――――
「古城?」
暁古城。魔城の義弟、第四真祖の少年だった。彼は絃神島にいるはずだが、それがなぜ、こんなところに――――。
とにかく、今はラ・フォリアの回収が先決だ。古城のことは後でもう一度探し直すことにして、彼から視線を外す。
「ラ・フォリア、行きますよ」
「あ、魔城っ」
一糸まとわぬラ・フォリアを抱き上げ、水面を蹴る。その瞬間、自らに疑似眷獣の加護を授ける。
「『海よ、我に力を』」
疑似眷獣《ヴァナヘイム》が呼び出す、さらに下位の眷獣、《ニヨルズ》の加護が、魔城に水除けの術を付与する。湖の乙女を始めとする北欧の精霊たちのごとく、魔城は水面を駆け上がる。再び先ほどと同じく木々を飛び越え、その先、誰もいない場所へと着地する。
途中でラ・フォリアの白い肌が見えて思いっきり顔をそらすと、くすくすくす、というラ・フォリアの笑い声。
「見てもいいのに」
「遠慮しときます」
ラ・フォリアが着替え終るのを待っていると、ボォォォォ……という低い音がきこえてきた。これは――――
「汽笛?」
近場の岩の上に飛び上がると、海岸線の近くを凝視する。そこには、軍艦めいた黒い舟――――甲板に刻まれた文字は、《メイガスクラフト》。その揚陸用のゲートがバクン、と音を立てて開き、中から複数の人影が現れる。
こちらにくる……と思われたその人影は、しかし魔城達とは別方向に進んでいく。これは――――
「ラ・フォリア、船です。メイガスクラフトの。複数戦闘員を確認。メイガスクラフト製の戦闘用自動人形です。恐らく現在古城――――僕の弟と交戦中です」
「第四真祖ですね。……どうしますか?」
「恐らくあの船はあなたを追ってきたのでしょう。ですが……」
「……助けに行きますか?」
「可能なら」
「分かりました。行きましょう」
あまりにもあっさり、ラ・フォリアはうなずいた。な、と思わず絶句してしまう魔城。ラ・フォリアはアルディギアの王女だ。その身を危険にさらすわけにはいかない。ましてや魔城の個人的な理由でならなおさらだ。だが、ラ・フォリアはそんなことをまるで気にも留めないかのように、古城を助けに行くことを承知してくれた。
「私は魔城の意志に従いますよ」
「……助かります」
今だけは、この王女の好意に……たとえそれが見せかけの物であるかも知れなくても……すがっていよう。魔城はそう決めた。
***
「くそっ!何だこいつら……っ!」
吸血鬼の真祖として、全力で殴りつけても、メイガスクラフトの戦闘員たちは全く動じない。まるで痛みを感じていないかのように、悠々と立ち上がって再び襲ってくる。
眷獣を使うか――――?とも考えた。
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