第T章:天使炎上編
02:《焔光の夜伯》、島外へ
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
て、口を開いたのは雪菜だった。どこで知ったのかは知らないが、それが夏音の養父の名前なのだろう。
「……失礼ですが、お客様」
オートマタの受付嬢が、感情を感じさせない声で問う。すると雪菜は、
「獅子王機関の姫柊です」
と、毅然とした表情で言い切る。古城は、雪菜が獅子王機関の名前を出したことに少々驚いていた。本来の任務とは無関係のこの場所で、生真面目な雪菜には珍しい事だった。
すると、受付嬢は、古城達の予想もしなかった回答を行った。
「――――承っております。あちらへどうぞ」
「……承っておりますって……?」
「さぁ……でも、手間が省けてよかったです」
雪菜と連れ立って、受付嬢の指差した方向へと歩いていくと、丁度秘書然とした服装の女性がやって来るところだった。華やかな金髪の、外国人の女だ。スタイルの良い体型に、ワインレッドのスーツが良く似合う。
「……何と言うか、ゴージャスな人だな」
「失礼ですよ先輩。というかその視線自体がいやらしいです」
もうっ、と雪菜が呟く。
「ごめんなさい。お待たせしてしまったかしら?」
女性が笑顔を向ける。その右手をよく見ると、銀色のリングがはまっているのが分かる。登録魔族だ。絃神島ではこういう風に、一般社会に魔族が溶け込んでいる光景も普通なのだ。
「いえ。こちらこそ急にすみません。獅子王機関の姫柊です」
「暁古城です」
「……暁?……もしかして、暁魔城さんの御親戚ですか?」
まさか、その名前が、この見知らずの登録魔族から出るとは思わなかった。
「魔城兄を知ってるのか!?」
「え、ええ……昔少し」
暁魔城は、古城と二つほどしか違わない外見を持ってはいるが、古城の知る限り十年以上あの外見は変わっていない。吸血鬼は子どもの頃はそれなりに早く成長するが、十六歳前後の外見から成長が遅くなり、老齢の吸血鬼と言うのは相当長い年を重ねているという。まぁ、個人差があるというか、そもそも一切外見が変わらない吸血鬼もいるらしいが。
魔城は最低でも三十年以上生きているはずなので、どこかでこの秘書風の女性と会った事があるのかもしれない。そもそも放浪癖があり、古城が幼いころから家にはあまりいなかった。ただそれでも、『どこどこに行っていつごろ帰ってくる予定です』という書きおきを大抵残していたので、それがない今回の事態が異常なのだが……。
「自己紹介が遅れました。私はベアトリス・バスラーと申します。叶瀬賢生の……そうですね、秘書の様な事をやっております。本日は叶瀬にどのようなご用件で?」
「申し訳ありません。今は詳しく言えないんです。ご本人と直接お話がしたくて……」
雪菜が言うと、ベアトリスとなのっ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ