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駄目親父としっかり娘の珍道中
第57話 お話の黒幕ってのは大概冒頭で死んだ奴だったりする
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 自分が何をされたのか全く理解出来なかった。気がつけば自分が大地に倒れ伏しその目の前には右手を鮮血に染め上げた伍丸弐號が立っていた。

「ご、伍丸弐號……貴様、からくりが創造主に逆らうのか?」
「あの時、貴様は言ったな。あの世で歯噛みしているだろう……と」

 蔑むような目線で伍丸弐號は冷淡に語る。必死にそれを見上げつつ男は聞いていた。
 そして、見上げた事を後悔した。
 其処に映っていたのは氷の様に冷たい伍丸弐號の顔だった。機械の冷たさではない。其処には邪悪な悪魔を模した冷たさが感じられた。

「どうやら、歯噛みするのはお前の方だったようだな」
「な、何故だ……何故、こんな馬鹿な真似を!」
「貴様に殺される事など既にお見通しだ。私のプロジェクトを乗っ取ったつもりだろうが。結局貴様は私の手の平の上で踊っていたに過ぎんのだよ」
「ま、まさか……お、お前は……」

 男の目の前で信じられない現象が起こった。突如として、伍丸弐號の顔半分が変質しだしたのだ。変質した顔、それこそ正しく、男が殺したであろう林流山博士その人であった。

「あの世で先に待っているが良い。直に賑やかになる。そして、そのまま見届けるが良い。私の作り出す新たな世界を」

 そう言い残すと、伍丸弐號は男など無視して計器の操作に取り掛かった。
 大掛かりな装置の上には頭に無数のコードなどが取り付けられたたまと、伍丸弐號が先ほどまで座っていたであろう台座があった。

「これは……やられましたな」

 感情が篭ってはいないが、明らかにしてやられたという感じの声をあげる。

「中枢電脳管が抜き取られている。これでは、此処にあるのは只の抜け殻でしかない。私に捕まる前に電脳管だけを抜き取り仲間の元へ渡したと言う訳か」

 伍丸弐號が簡潔に語り、振り返ると其処には鉄パイプ管に両手を縛られて拘束された新八の姿があった。
 あちこちが傷だらけなのを見る限り抵抗したのだろうが空しく捕まってしまったのだろう。

「侍は……一旦守ると決めた物は死んでも守り通す!」
「その為に自分の命も投げ出すと? 哀れな事だ」
「機械のお前には分からないだろうけど、たまさんには心があったんだ! からくりの体でも、僕達と何ら大差ない心が出来ていたんだ!」
「それだ、それこそ正に私が求めていた物だ。だからこうして持ってきたと言うのに、肝心のその中身がないのでは意味がない。どうやら、その穴埋めを君にして貰わねばならないようだな」

 目を見開き新八を睨む。その視線は余りにも冷たく、そして狂気に満ちていたと言える。




     ***




「今頃、奉行所の連中は皆、伍丸弐號とその手の奴等に皆殺しにされてるだろうよ」

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