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王道を走れば:幻想にて
第二章、その1:門出
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そろ御暇させていただくため、御挨拶にと」
「いやいや、此方こそ。樫の花を背負う立派な騎士さんを迎えられて本当に光栄でした。我が村の自慢の料理は如何でしたかな?」
「大変素晴らしい美味で御座いました。王都でも、あのような料理は中々に回り逢えぬものです」
「嗚呼、それは嬉しい!騎士様、またどうぞ御縁がありましたらお留まり下さいませ。我等村の者共、何時でも、歓迎致します」
「はい、必ずやまた参りましょうぞ。では、ケイタク殿」
「分かりました。...どうもお世話になりました。またなっ、皆!!」

 遂に慧卓は腰を上げ、手を振りながら子供達に別れを告げる。子供等は寂しさを紛らわせるように、大きく、強く声を上げて二人の背中を見送った。温かな別れに小さく微笑み、アリッサは慧卓に言った。

「随分と好かれていたな、ケイタク殿?子供の世話は得意分野だったか?」
「まぁそこらへんはちょっとは慣れてるんで、ん?」

 ふと一方を見詰めた慧卓の視線に合わせてアリッサも見遣る。貯水塔の陰に隠れるように、栗色の髪の毛をした可愛らしい少女が慧卓等を熱い瞳で見詰めていたのだ。少女は視線に気付くとはっと慌てて、益々に身体を塔に隠す。いじらしい態度にアリッサはにやにやと笑み、からかうような口調で慧卓の肘を己の肘で突いた。

「...ほぉ?随分と可憐な少女だったな?まるで恋に落ちた少女のようだったぞ、色男」
「色男って...いやいや、あれは俺相手の視線じゃありませんよ。アリッサさんに惚れている瞳でしたよ、間違いなく」
「ちょっ、ちょっと待て!なんで同じ女である私なんだ!?あれは明らかにお前だろ!」
「馬鹿言わんで下さい!あんな可愛い子が俺みたいな駄目男に惚れるだなんて有り得ませんって!絶対にあれはアリッサさんに恋してます!マジで落ちちゃう五秒前の目でしたよ!!」
「その自信は何処から出てるのだ、お前は!?」

 互いに大声で言い合いながら二人は肩を並べて歩いていく。近くで準備をしていた兵達は呆れ、そして微笑ましい光景を見守るかのように微苦笑を浮かべていた。
 所変わり村の出口にて、出立の準備を整え、清廉で輝かしい貴族の鎧に身を包んだコーデリアが待機していた。既に彼女は騎乗しており、後は指揮官の出立の号令を待つだけとなっていた。其処へ指揮官が現れ、からかう様に深まっている笑みを見せて彼女に言う。

「王女殿下、出立の用意が委細整いまして御座います。後は、殿下の号令だけです」
「もう、貴方が指揮官でしょうに。胸を張って号令を掛けてもよいのですよ?」
「誠に恐れ入りますが、兵士共や村の方々も御期待されているので」
「...もう、皆して」

 コーデリアは一つ諦めたように声を漏らし、馬首を村の方へと向かわせた。彼女の視界の中で、互いを大声でからかう
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