第二章、その1:門出
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考えだが、些か唐突過ぎると慧卓個人は感じていた。正しく昨日突然召還されたばかりのにこの話であったのだから。もう少しは村の雰囲気を愉しみたかったというのが、彼の本音でもあった。
コーデリアが確りとした口調で言う。
「王都に帰還した際には、事の詳細を国王陛下を始めとして並居る諸将や宦官の方達に報告せねばなりません。彼らは国王や貴族の方々と共に宮殿に居る...もうお分かりですよね?」
「其処まで言っていただければ分かります。流石にこの形じゃ、幾らなんでも無礼に値するか...」
慧卓が着ているのは此方側に来訪した時と同じ服、白のポロシャツに青のジーンズ。此方ではさぞや珍しがられる事請負であり、同時に一発でラフな格好と見受けられるものであった。国の中枢に足を進めるとあっては、身形はきちんと整えなければならないようだ。
「今着替えを用意するという訳にも参りませんから、途中に立ち寄る町で正装を用意すると致しましょう」
「後、道中で一通りの礼儀作法と一般常識を叩き込んでおかないと成りませんね?失礼に値しますから」
「うわっ...俺大丈夫かな?」
「人間、その気になればなんでも出来るぞ、ケイタク殿」
本邸の扉が開き、アリッサが姿を現した。熊美に続いて慧卓が申し訳無さそうに頭を垂れた。
「お早う、アリッサ」
「あっ、お早う御座います、朝はなんかすいません、アリッサさん」
「お早う御座います、クマ殿、ケイタク殿。あのな、ケイタク殿。気にする必要は無い。あれは、あー、ただの事件だ、不可抗力だものな、此方こそ殴ってすまん」
アリッサは言葉を詰まらさせながらも慧卓を許そうとそれを紡ぐが、それでも心の何処かで彼を恨んでいるのか、事故ではなく事件と呼称していた。慧卓もそれに気付いており、力無い笑みを浮かべて許しを受ける。
アリッサはコーデリアに向き直り、常の凛々しき騎士の面立ちを浮かべる。
「殿下、朝食の用意が整いました」
「有難う御座います、アリッサ。ではクマ殿、ケイタク殿、御一緒に如何です?」
「喜んで御供させていただきます」
「此方こそ、お願いします。こっちに来てからまともな御飯は初めてな気がするな」
「あら?でしたらきっと驚くでしょうね。その優しい美味に」
四者は本邸の中に足を踏み入れ、現代でいうところのダイニングに向かった。淡い風合いの木の壁に囲まれて、四つの椅子を収めた食卓が部屋の真ん中に鎮座している。そしてその机上に、お目当ての朝食が並んでいた。
「これが、この村の伝統的な朝食です」
「うっほぉぉおおお......」
慧卓にとって、涎が自然を湧き出るような光景であった。
仄かに湯気を立てて狐色に焼かれた食パン。白綿のようにふんわりと生地が裂かれ、波を幾重にも描いている。備付
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