第六十三話
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気なところを見せる。
心配させるわけにはいかないもん。この子達は妹じゃないけど、この場で一番のお姉ちゃんの仕事。
「あの・・・」
「ん?な〜に?」
「武双君は?」
そこで、全部思い出した。
そうだ・・・ムー君が!
「酸素ボンベ、いくつか貰うね!」
「え、ちょ、依林さん!?」
跳躍の術で軽く跳んでその場にある酸素ボンベを全部回収。
そのまま止めようとしてくる手を避けて走り、海に入る手前で再び跳躍。
何回か跳躍を繰り返して、大体ムー君の真上だと思う位置でボンベを背負い、飛び込む。
そのまま全力でもぐって、途中で水圧に耐えるための術を上乗せ。ムー君が掛けてくれたやつだから大丈夫なはずだけど、無意識のうちにやっていた。
ひたすら進んでいって、ムー君が腰掛けてた岩場を見つけた。
後は、このままたどっていくだけ・・・いた、ムー君!
そのまま泳いで近づいていくと、ムー君はこっちに気付いたのか、締め付けられて苦しそうにしながら首を振ってくる。
―――ダメだ、こっちに来ちゃ!
そう言ってるように見えたけど、私は気にせずに近づく。
そしてムー君の口に酸素ボンベをつけて、呼吸をしてもらおうとして・・・全部吐き出されて、目を見開いた。
慌てて頭に手を当てて、その体が揺れてるのを確認。
そっか・・・全身揺らされて、全部吐き出しちゃってるんだ。
だったら・・・
「!?」
ムー君が驚いてるのも、お顔を真っ赤にしてるのもまず間違いないと思う。
だって・・・私も、今間違いなく顔真っ赤になってるし。
恥ずかしい・・・冷たい海の中にいるのに、顔が熱い。今にも気を失っちゃいそう。
でも、そんなことは出来ない。そんなことをしたら、二人揃って死んじゃう。
そう考えながらキスしていた口を一回離して、すぐにムー君のお口を手で塞ぐ。こうでもしないと、全部吐き出しちゃうから。
で、空いた手で酸素ボンベの吸入口を自分の口に当てて、少しでも多く吸い込んで時間を置かずにムー君とキス。
そのままムー君に肺の中の酸素を流し込んで、吐き出しちゃった分は全部私の肺に入れる。
循環呼吸。吐き出しちゃうなら、それも私とムー君の間で循環させればいい。
当然酸素がなくなって二酸化炭素だらけになっちゃうから、そのたびに一回口を離して酸素を補給する。
ムー君が驚いた目で見てくるけど、それには出来る限りの笑顔を返す。
私は、大丈夫。当分の間はこれを続けられる。
だから、ムー君は何か手を考えて?この場から二人揃って変えれる手を。
それまでは、ちゃんと守ってあげるから。
だから、一緒に帰ろう、私の大好きなムー君。
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