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王道を走れば:幻想にて
第一章、その6:血潮、ハゲタカの眼下に薫る
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これを下段に突き出す。熊美の剣の意識が其処に奪われた瞬間にカルタスは斧槍を跳ね上げた。顎先を突起が掠め、熊美の肌を裂く。思わずたたらを踏みながら後退する熊美は、思い直したかのように踏ん張り剣を構えた。
 熊美の足は既に円の端へと及んでおり、冷血な鉄剣の棘がそれ以上の後退を阻んでいた。事を早々に決めんとカルタスは気を燃やし、剣の利を奪う槍の刺突と斧の払いをさらに繰り出していく。熊美もまた反撃の手を緩めず、幾度か歩を進めてカラタスに剣を振るうも、斧槍のリーチを生かして遠目遠目に牽制するカルタスに届かず、再び鉄の棘に向かって追いやられる。
 その一進一退の攻勢が何度か続き、熊美が幾度も縦横無尽に走る斧槍の刃を払い除けた後、カルタスが斧槍を引き戻し様にこれを振り上げて、熊美の膝を割らんと叩き落す。而してこれは過ちの一手であった。熊美は大剣で攻撃を払い落とすと、一気に距離を詰める。得物のリーチの差分だけ開いていた距離が瞬く間に埋まり、勢い良く振るわれた剣先にカルタスの頬を捉えた。回避が充分に間に合わず、一文字に頬から血潮が溢れた。

「おおおおおっっっっ!!!!」

 熊美は最早遠慮は無用とばかりに剣を幾度も振るい、間合いとカルタスに迫る。カルタスは斧槍の柄を半ばより握り締め、後退しながらこれを振り回すようにして攻勢を受け流す。後退をしながら斧槍を棒のように振り回し、柄頭による打撃をも含めて反撃の手を緩めない。だがそれ以上に、熊美の猛攻の前に防戦を一方的に展開していた。カルタスが握る獲物は斧槍。力任せに振るうも良く、鉤で以って足や方を引っ掛けるも良し、或いは突起にて串刺しにするも良い等と非常に広範な攻め方が可能となる獲物である。その巨体から発する重量に依れば革の鎧等といった軽装ならば容易く裁断され、貫通する。鎧の中の頭蓋や肉の層が断ち切れるほどの一点に集中した振りは、それだけで脅威であった。だがこれを十全に扱えるようになるには、咄嗟の判断が可能となる俊敏な判断力と、何よりそれを可能とする強靭な体躯が必要であった。重量と巨体にに振り回されれば容易く態勢が崩れ、看過し難き隙を露見させる。だがカルタスは身体のパーツ一つ一つを遊ばさず、歯車の如く互いに噛み合った動きをしてその振りを可能とさせていた。腕のみにあらず、腰も足も一連の意思の下に連動し、槍の威力を高めている。正に経験の賜物である。
 大して熊美が手にするは大剣。刀身だけで1メートル近くもある巨剣である。重量も宛ら大木の如きものであり、腕のみで以ってこれを支えるは至難の業といえよう。故に、その圧倒的な一振りは体躯を輪切りにし、その一突きはまるで一矢の矢のような鋭利さを兼ね備えている。重厚な鎧を纏うといえども、これを前にすればいとも容易く血華を咲かせるは畢竟。但しそれは当たればの話である。質量に大きく依存し
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