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王道を走れば:幻想にて
第一章、その5:門の正しい壊し方
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て事よ、気を付けて扱え!」

 そうこう言っている間に二人の荷車は門の近くへと近付き、足を止めた。木壁の外をちらりと見遣ると、険しい大地に幾多もの兵士達が敷き詰めているのが見えた。大盾を地面に突き刺し、それに身体を隠しながら兵達が次々と石弓を放っている。門の外には破城槌の後姿が見え、突撃の己の切っ先を門へと突っ込ませていた。
 荷車を引っ張ってきた男は小さく不敵な笑みを零すと、手榴弾を二つ掴み取り、一つを慧卓に渡す。案外、ずしりとくる重さである。拳大の大きさのそれに、砲丸投げの球ほどの大きさを感じた。
 
「良いな?俺が最初に投げるから、お前はそれを真似して投げるんだ!」
「...分かった」

 男は手榴弾の導火線に松明の火を移す。バチバチと導火線が火花を燃やし、男はそれを投擲するように腕を振り被った。

「せぇぇのっっっ!!!」
「ふんっ!!!」

 瞬間、慧卓は握り締めた手榴弾を男の頭部へと全力で叩き付ける。敢無く、後頭部に走る衝撃で意識を落した男の手から手榴弾が毀れ、木壁の外へと転がり落ちていく。誰も立っていない岸壁の上を転がって森の中へと姿を消し、数秒が経ってからぼんっと勢いのある音が弾けた。言葉通り、威力も中々のものらしい。
 慧卓は白目を剥いて気絶する男に意地悪い笑みで謝罪した。

「悪いな、おじさん。今度会ったらステーキでも奢るよ。俺食わないから」

 慧卓はそういって手榴弾を荷車へと放り投げる。そして荷車が向いている先にある木壁に上る為の階段に目をつける。丁度階段の最初の段を降りれば、そのまま門へと降り立つ事が出来る配置である。
 慧卓は纏っていた山賊の服を脱ぐと、手榴弾の束の上へと掛ける。そして荷車を引くために位置についた。

「ふんぬぉおおおおっ......」

 掛け声にも似た唸りを口から零し、慧卓は懸命に荷車を引く。手榴弾が幾十も詰まれたそれを牽引するのは、男としてみても華奢な体躯の持ち主である慧卓にとっては難儀を極めたのである。

「くそっ、本当にタダ働きかよっ...んがああああああ!!!!」

 しかし慧卓は気迫を吐いてそれをゆっくりと引っ張っていく。車輪が重苦しい音を立てながら一歩一歩、慧卓の懸命の歩みと共に前進する。全力を込めて引っ張る彼の腕に血管が浮き出て、顔が一気に赤らんでいく。息を大きく切らせながらも慧卓は荷車を進ませていく。木壁を盾にして歩く慧卓の頭上を、石弓の矢が飛び交っていく。賊の者もちらりと彼を見遣るが、手榴弾をより近くより投擲しようとしているのだと勝手に納得して、それぞれの対応に集中していく
 己をも勝る重量と格闘し続ける事数分。漸くにして、階段の一歩手前に慧卓が足を進ませた。取っ手を下ろすと荷車が前に傾く。足を動かして後方からそれを見遣る。力強い蹴りを一
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