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王道を走れば:幻想にて
第一章、その5:門の正しい壊し方
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 肝を冷やした男達が口々に叫ぶ。

『門を抑えろぉお!!破城槌に抜かせるな!!』
『射手が足りんっ!!手が空いている奴を回せぇ!!!』
『さっさとアレを準備しろ!もう一刻の猶予も無いんだ!』

 吐き出される蛮声に混じって矢が飛来する高調子が混ざり、男達の生命を危機に曝していく。  

「すげぇな...本当に戦争だよ...!」

 慧卓は、自らも傷つくかもしれぬという状況において尚、感動の念を覚えていた。ゲームの中でしか見た事が無い映像が、或いは様々な教科書でしか知り得なかった知識。実際に学ぶ事も見る事も出来ないそれは、一抹の憧れの泡となり、何時かは弾け飛んで消えてゆくものと思っていた。それが今、現実と姿を変えて慧卓の胸を弾ませていた。
 だが慧卓は思い出したかのように頭を振ってその念を払いのける。すぐに真剣みのある表情を浮かべて、砦を見渡した。

「...さってと、何処に隠れるか」

 本来の目的を忘れたりはしない。この場において自分は武器は力も持たぬ唯の一般人なのだから、無闇に修羅場に飛び込もうとしてはいけない。そんな思いの下に己を隠すのに相応しい場所を探している其の時、がらがらと車輪が重苦しく成る音が彼の耳に入る。
 ふと其方へと視線を送れば、一人の男がゆっくりと荷車を引き、木壁の上を進んでいた。四方を柵で囲んでいる荷車の中には、何やら黒く丸いものが大量に積まれていた。男は粗野な瞳に慧卓を捉えて言う。

「ん?おいお前、そこでなにやってる!!」
「えっ!?あ、いや、俺はだなーーー」
「今火急の事態だってのが分かるだろ!?手を貸せ、王国兵にやられる前に、こっちがやるんだ!」

 如何やら自分を山賊の一人と誤認しているらしい。僅かに安堵した慧卓は唯々諾々と男に従い、荷車の後ろに回りこんでそれを押していく。がらごろと車輪が木壁の上を回る中、慧卓は荷車に積まれた幾十もの物体に疑問符を浮かべる。

「これはなんなんだ?」
「お頭が貴族の旦那から買ってきた火薬とかあんだろ?あれを詰めて作り上げた奴だよ。お頭は、『手榴弾』っていってたな」

 成程、いわれて見れば『手榴弾』に似てなくも無い。黒光りとするそれは鉄を溶かして固め、成型したものなのであろう。鉄球の頂上には蓋のようなものが嵌め込まれており、その中央に10センチほどの導火線が伸びている。着火して爆発するまでには、かなりの猶予があるようだ。

「火薬をたんまりと、そして鉄の破片に硫黄を混ぜて中に詰めてあるからな。後は火を点けて兵隊どもにぶん投げれば、忽ち地獄を具現化できるってわけだ」
「...威力も凄いんだな?」
「あたぼうよ!!一個でもやべぇけど、今荷台に詰めてある奴を一気に爆発させたら、此処の門なんか一撃で吹き飛ぶぜ!!それくらいやばい代物だっ
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