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王道を走れば:幻想にて
第一章、その5:門の正しい壊し方
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と獰猛な微笑を浮かべた。

「久しぶりだな、童。覚悟は良いか?」
「...ったく、なんで天は賤しきを見捨てるんだか。くそったれ」

 そう投げ遣りに悲嘆に暮れた言葉を漏らすと同時に、猪面の男に鉄拳が突き刺さり、男の意識を暗闇の中へと叩き落して身体を壁に叩き付けた。悪鬼、熊美は一転して朗らかな笑みを浮かべると、机に縛り付けられているアリッサに顔を向けた。

「大丈夫?何か乱暴されなかった?」
「...えぇ、それをされる前に貴方が現れたから」
「そう...縄を解くわね」

 熊美は男の手から毀れた剣を掴むと、その切っ先を素早く閃かせて瞬く間にアリッサの四肢を括っていた縄を断ち切る。その腕捌きに改めて感服の念をアリッサは抱いた。流石、世に名高き豪刃であると。縛り付けられていた部分を擦りながら、アリッサは熊美に聞く。。

「一つ聞いてもいいですか?」
「えぇ、いいわよ」
「三十年前、父を守ろうとした者達は、どれほどの数だったのでしょうか?」
「...どうだったかしらね。良く覚えていないわ。老いも若きも、貴きも賤しきも、皆あの人を守ろうと命を燃やしていたから、数なんて...」
「...詰まらぬ事を聞きました。お許しを...」

 何処か考えに耽るように沈黙を抱くアリッサ。部屋の中に立ち込めていた土煙が外気に撒かれて穴から噴出し、心成しか血臭も薄れたような気がする。新鮮な空気と風が吹き込む中、両者は言葉を噤んでいた。 
 其の時、部屋の扉を勢い良く叩く音が聞こえ、ついで大きく声を掛けられる。

『おい、どうした!?なにかあったのか!?』
「流石にこの大音量はばれるわよね」

 先の壁の破壊により、上階の者が気付いたらしい。熊美は周囲を見渡して言葉を漏らす。

「幸いにして此処は拷問部屋のようね。武器だけはふんだんにあるわ。...ほら、これは貴女の剣じゃないの?」
「えぇ、有難う御座います...」

 アリッサは剣を受け取って地に足を着ける。確かめるように両手で柄を握り、緩やかに振り被って一気に振り落とす。胸の前で確りと振りを止めて刀身を真剣に見詰めた。

「...冴えは消えてないか。クマ殿、貴方はーーー」
「いい武器だわぁぁ、これぇ」

 ぶおんっ、と空気が二つに切り裂かれて烈風が部屋に吹き荒び、アリッサの髪をばさりと揺らす。眼前に広がる光景に、アリッサはあんぐりと口を開く。熊美のその手の中に握られていたのは、刀身が大人の頭部から腹部まである、巨大な両刃な大剣であった。剣先は鋭く尖り、剣の腹は拳大ほどに幅広であり、それだけで人の胸骨が粉砕できそうなほどに力強く鍛え上げられている事が手に取るように分かる。装飾の類が一つたりとて見られぬ、無骨な見た目の巨剣である。
 その外観通りの常識外れの重量のために
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