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王道を走れば:幻想にて
第一章、その5:門の正しい壊し方
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の最中に数多の者達を味方につけ、訓練を積ませ、王国の誉れある兵士として登用した。其の中には、世から疎まれ嫌われていた賊徒の者達も含まれている。卑劣漢と一方的に蔑むのは如何なものではないか?」
「卑劣だね!!!あの時、俺はいつも先陣を切って戦っていたんだぞ!?いっつもあの人の背中を守ろうと、恩を返そうと、懸命に大地を走っていた!!!なのにっ...」

 猪の瞳が爛々と怒りに猛り、アリッサの視線を噛み合う。その瞳に宿るそれを見て、アリッサは思わず憐憫の念を禁じえなかった。瞳の表面を覆い隠すかのように、愁いを抱いた潤いが満ちている。それは涙であった。怒りの余り、というには不自然なほど潤んでいる。まるで絶望的な現実を前に挫折する、一人の子供のように。アリッサは男が漏らした言葉に心当たりがあるのか、複雑な表情をしたまま男を見詰めていた。
 男は何度か頭を振り、瞳の熱を段々と沈静化させていく。色が消え失せて、虚心を抱こうと必死に激情を治めようとしていた。

「...いや、何でもない。遠い昔の話だ。俺は唯の賊徒、唯の拷問官。生贄の仔牛の腸を開き、神に捧げる唯の信徒」
「己を非情で飾るか。それで己の心は消せたりはしないのだがな...」
「生贄は言葉を発せない。唯、鉄斧の前に屠られるだけ」

 男が剣先を見詰めて、煌かせるように横に倒す。刃の腹に、アリッサの憐憫の瞳が映りこむ。内心を見透かされているような気がして、男が激情に顔を赤らめ、瞳に殺意が沸き始めた。ひしと握られた柄がわなわなと震えて音を立てている、

「...クウィス、アリッサ=クウィス、ティムール=クウィス...覚悟しろっ...」
「...過ぎた怨念は己に帰るぞ」
「喧しいっっっ!!!!!!!!」

 男が一気に剣を振り被り、アリッサのその瞳を切り刻まんと振り下ろそうとした瞬間ーーー。

『っっらぁぁああああ!!!!!!!』
「は!?」

 耳を疑うかのような咆哮と轟音、そして地を震わせる揺れに驚愕して男がたたらを踏む。半ば呆然とした表情で、男は換気の穴へと近寄って外を見詰める。咆哮は確かに、この穴から突き抜けてきたのだ。心成しか岩を蹴りつけるような音が男の耳に入っていく。それは下方より生じているようで、段々と近付いてきているようにも思えた。

「なっ、なんなんーーー」

 突然、穴の外より唸り声が聞こえて男が耳を疑い、直後に体躯を襲う強烈な衝撃と粉塵に、後ろのめりに吹き飛ばされた。ごろごろと床を転がった後に顔を上げて彼が見たものとは、大きな穴を開けてぼろぼろと崩れた壁。そして其の穴から這い登って屋内へと侵入する、一人の悪鬼の姿であった。悪鬼は煌く日光を後光のように背負い、体躯を覆う血のようなドレスから土埃を払い落とすと、地面に転がり呆然としている男を見詰め、にやり
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