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王道を走れば:幻想にて
第一章、その5:門の正しい壊し方
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「......」
「ちっこい国の癖して威厳だけはたっぷりだし、何処に行っても四季が巡って来るし、おまけに飯はレパートリーが少ないしよ」

 通路が途中より坂に変わった。石を均(なら)して緩やかな坂へと変貌させているのだ。賊の革作りの靴が地を踏みしめ、アリッサのグリーヴが地を踏み鳴らす。  

「此処のやつらも嫌いだ。どいつもこいつもあこぎに成り切れない半端な連中だ。民衆を狙わず、同じあこぎな商人や神官を狙って行動する。お陰で、妙に稼ぎが良い。こいつも気にいらねぇ!山賊なら相手を選ばず略奪するものなのによ!!」

 僅かな距離を経て、坂の最深部にある鉄扉の前に二人は着いた。男は懐から一つの鍵を取り出して鉄扉の錠を開く。中に足を踏み入れた途端、鼻孔をへし曲げるかのような強烈な血の臭いが出迎えてくる。アリッサが思わず眉を顰めて中に入ると、其処に広げられていた凄惨な光景に思わず納得の意を抱き、そしてその演出者である猪面の男に嫌悪感を抱く。
 扉の中にあったのは、一つの部屋であった。高さは6メートルほど、奥行きも相当であり、壁には換気の為に作られたであろう横広の穴が開けられている。だがその換気というのは唯の気休め程度のものであったらしい。部屋全体に斑点のように飛び散って付着している、夥しい量の血痕から放たれる醜悪な臭いがそれを象徴している。部屋の中央には手術台のような一つの机が鎮座しており、元の茶褐色に赤黒い色彩を混ぜていた。部屋の所彼処の壁には、殺伐とした見た目をしている多種多様な道具が掛けられており、何れの道具の使用部分がどっぷりと穢れている。それが何の為か、今更問い質すもお節介というもの。この部屋は、生粋の拷問部屋であるのだから。

「それにあいつら、クウィス男爵を崇拝してやがる!クウィスだ!!三十年前に俺達盗賊を都合よく使って、国内平定に漕ぎ着けたクウィス男爵。俺はあいつが特に嫌いだ。名前を聞くたびにむかついてくる」

 乱暴に言葉を吐き捨て、アリッサを机の上へと押し倒す。四肢を動かせぬように荒縄で縛り、机の脚へと繋いでいく。男もまた屈強な体躯とはいえ、アリッサが抵抗して倒せぬほどの者では無かった。だがアリッサは口々に男が紡ぐ言葉に惹かれ、男がいわんとしている事を聞くために為すがままとなっていた。
 男の扉の鍵を閉めると、部屋の片隅に立て掛けられていた、拷問部屋に似合わぬほどの美麗さを保つ一振りの剣を掴んだ。それは、牢獄内にてアリッサから奪われた剣であった。未だ穢れを知らぬ刀身は壁の穴から漏れ出す光を反射して、きらきらと光沢を湛えている。それを疎ましく思うかのように、男が剣の柄をひしりと握り締めた。

「何が英雄だよ!!人の事を散々弄んで利用しまくった挙句、其の後に俺達を裏切った卑劣漢じゃねぇか!!!」
「...私の父は、戦
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