棋譜の相手1
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ずっと考えていた。私が得た棋譜の数々の大半を占めるのが指導碁だ。これは何を意味しているのだろう。白は・・・saiで・・・間違いない。しかし黒は・・・。分からない。だから私はヒカルを見上げた。ヒカルの瞳は静かに高鳴っていた。
「昔の俺に、すごく似てるんだ。俺ならこう打ってたっていうところが、全部再現されてて」
ヒカルが・・・黒!?そんな・・・!ヒカルは少しずつ説明した。私はもう一度碁盤を見る。
「それで、俺の相手は・・・秀策に似てる。それにこれは指導碁で、相手は力を温存してる。だから相手の本当の力なんて、分かんないけど・・・この人、すごく強い気がする」
打ち方が似ているような人なんていっぱいいる。けれど、ヒカルはそんな次元じゃないくらいに確信しているようだった。この黒は自分だと。それを見たら、私はヒカルの話を信じずにはいられなくなった。ではなぜ、昔のヒカルが私の棋譜の中に・・・。
「ねえ、この棋譜は藤原さんにとって何なの?」
「・・・病院で、思い出した棋譜の一つを並べてみただけです」
ヒカルは目を丸くした。そして碁盤の横を通って私の体に縋りついた。
「藤原さん、俺に、昔会ったことある?この一局は藤原さんが打ったの?俺、何か思い出せそうな気がするんだ!」
この棋力のヒカルに会ったことはない、打ったこともない。これがヒカルの失くした記憶に繋がっている?だったらsaiと私は別人じゃないか。
「藤原さんは俺に思い出させるためにこの棋譜を並べていたの?」
ヒカルにとって、そんなにsaiは大切なんだろうか。ヒカルは必死になって聞き出そうしている。saiの棋譜のことを。
じゃあ・・・私は?ヒカルが求めているのは・・・saiなの?
口が勝手に動いていた。
「・・・対局、してみますか?ヒカル」
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