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王道を走れば:幻想にて
第一章、その3:オカマっていうな
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まで関係が発展している訳でもない。

「お待たせ。かえろ、エッチな御条君」
「ちょっ、ちょっと待て!俺は別に盛っているわけじゃない!」
「はいはい」

 何時も如く繰り返される会話。全ての男子は艶やかな女性らしさに目が移るものだ。そう言いたげに言い訳をする慧卓と、軽く受け流してからかう実晴。二人は何時も通りに話をしながら、繁華街の人混みの中へと入っていく。 

「ん〜、今日はなんか疲れた気分がするわ、やっぱ熊美は凄いなぁ」
「もう熊美はいいっての。あ〜あ、俺も帰ったらなにすっかなぁ?」
「特に用が無きゃ私の家に来ればいいじゃない?今日は暇だし、あ、あと貴方が言ってた戦略ゲーム買ってみたの!キャラも可愛いし、意外と面白いゲームだったわ」
「おぉ、此処に素養持ちが居たとは!どっかの渋いのとは大違いだよ」
「で、渋いのはどうでもいいとして、どう?うちに来る?」

 慧卓はそれを聞いて、青少年ならば誰でもするであろう、邪な思いを抱かずにはいられなかった。横に並ぶ女性の美しく淫らな姿を何度も間近で見ているだけに、その思いは具体性を帯びて彼を誘惑する。だが慧卓は渾身の理性の働かせてそれを振り払った。

「そうしてイチャイチャしたいけど残念、学校の宿題があるんだわ。納期に厳しい先生から出されたものがあってな」
「あっ、そうなの、残念。別にイチャイチャくらいしてもいいけど」
「・・・それで止まらなくなって一日を無駄にするだろ。何度も体験してきたじゃないか」
「ヘタレ」「ヘタレで結構」
「いつもそっちから暴走するうちに」「・・・」
「本当、慧卓って馬鹿だよねぇ」

 返す言葉も思いつかない。慧卓は口をむっとさせながら歩いていく。
 勤木市中心街の夜は騒々しく、目に痛い。通りを歩けば、歩道では雑踏と話し声が入り交ざり、車道では大小の車が擦違い、夜空には車が入り交ざる蛮声が反響する。見上げれば店舗の看板は七色の派手な光を爛々と焚き、商業ビルの窓からはうすらと光が漏れていた。
 数分道中を供にすると、両名はバス停の一つに足を止めた。実晴は何時も此処からバスに乗って帰宅する。 

「じゃ、今日もお疲れ様ぁ。今度は普通に遊びましょーねー」
「おう、お疲れ様」

 バスを待つ実晴に別れを告げて、慧卓は大通りの歩道を歩いていく。電飾の眩さに目を細めながら歩いているうちに、心の中にもやもやとした感じが残っているのを感じた。いわずもがな、仕事の疲労から来るストレスだ。

「さってと、どーすっかなぁ?」

 ストレスを溜める事は風船に空気を入れ続けるようなものだ。何時の日か風船は破裂し、欠片となって地に落ちる。適度に空気を抜くか、或いは空気を入れ過ぎないか。それが一番の対策だ。

「んじゃ、ぶらぶらふらつきますかね・・・」

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