第一章、その3:オカマっていうな
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達が囃し立て、広場にて立ち話をしていた男達もまた口々に出迎える。広場の中心では炊事の炎が上がっており、男が汗を掻きながら大きめの鍋をぐつぐつと掻き混ぜている。慧卓らと共に歩んだ者達も己の任を終えたのか、一部を残して言葉を零しながら散会していった。
『おい、あのデカブツ見たか?すんげぇ身体鍛えてるぞ』
『けったいな奴よかあの麗人だろ!綺麗な髪の毛してるよなぁ...しかも鼻筋も綺麗だし、諸好みだわ』
『ん〜・・・どっかであの女性に似た人を見たような気がすんだよなぁ...あれは何時だったかな』
『おい爺さん、そりゃ何時の話だ?まさか三十年くらい前だって言わないだろうな?そんな昔の事なんて俺にゃ分からないぜ』
『ふてぶてしい餓鬼だぜ・・・見ろよ、あの面構え。ありゃ目の前で星が落ちてきても鼻で笑い飛ばす顔だぜ』
(いや、それはねぇよ)
心の突込みを他所に慧卓らは残った者達に引き立てられて、砦の中へと連行されていく。
山中の洞窟を利用して作られたのであろうか、壁を掘削して掘られた穴に燭台が掛けられ、其処に明るい火を燈した松明が掛けられており、中を明るく照らしている。地面はじめじめとした感じが一切無く、土の塊が踏み砕かれて砂と変じていた。だが場所によっては岩清水が浮いて出たのか、岩がじんめりと水気を帯びている。天然の通路を歩けば幾多もの分かれ道と扉が左右に覗き、扉の内々で人の話し声や笑い声が聞こえて来た。慧卓は一方で、B級映画にありがちな誰かの呻き声や鞭打ちの音がまるで聞こえない事に肩透かしを食らった気分であった。
砦内の通路を進み、小さな広間を幾つか抜けて段々と下っていくと、一際重厚で冷淡な色をした鉄扉が彼らを出迎えた。男の一人が鍵を用いて扉を開けると、中からなんともいえぬ腐臭が漂ってきた。
「入れ」
男に催促されて中へと足を踏み出し、慧卓は視界の中に捉えた光景に溜息を漏らしかけた。それはいわずもがな、冷酷な地下牢であったのだ。幾つもの牢屋の中には白骨化した死体があり、栄養を貪ろうと数十もの蛆虫がキチキチと歯を鳴らしている。鉄柵は精々指で掴めるくらいの隙間しか無く、無理に開けようとすれば忽ち轟音を鳴らしてしまうのは目に見えていた。
慧卓らは幸運にも、蛆一匹、骨片一つ転がっていない一番奥の牢屋の中に入れられる。男がアリッサの腰に差されていた一振りの剣を奪い取る。牢屋の鍵を閉める際、男達が念を押すように言う。
「お頭が後で来る。それまで大人しくていろよ。」
「特に其処の、なんだ、漢女!!お前は特になっ!!あの、本当にお願いしますねっ!!」
馬鹿丁寧に一人の男が懇願するように両手を合わせながら去っていく。がしゃんと乱暴に閉められた扉により、冷ややかに鉄音が牢屋の中に響き渡る。去り際に男が見せた何とも哀れな姿に慧
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