第百五十九話 巨寺その八
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「よいな、わかったな」
「はい、それでは」
森長可も頷く、こうしてだった。
森と長可が先陣となりまず出陣した、信長は二人が出るのを見て傍らにいる蒲生に対して確かな笑みで言った。
「八郎だけでは死ぬ」
「雑賀孫市相手にはですか」
「八郎もまたよき将じゃ、しかしじゃ」
「雑賀孫市はですな」
「また違う、覇王だの温候ならばな」
異朝において無双と言われる強さを誇った者達に例えられる程ならというのだ。
「とてもな」
「八郎殿だけではですか」
「八郎は責を思う気持ちが強い、戦の時は常に前に出る」
「そうして采配を取られますな」
「それでは斎賀孫市の鉄砲のいい的じゃ」
「だから死なれるというのですか、八郎殿が」
「うむ、しかし勝三も共にいるとじゃ」
長可もいるとだ、どうかというと。
「あ奴も自分から前に出る男、しかしその強さは鬼じゃ」
「鬼故にですか」
「八郎が楯となり守りじゃ」
そしてだというのだ。
「勝三が矛となる、それに八郎は守りの戦も上手じゃ」
「その楯と矛で、ですか」
「与三が着くまでな」
まさにその時までだというのだ。
「持ち堪えればよい、そして本陣まで来たところでな」
「雑賀衆をですか」
「侮らぬがその数でじゃ」
圧倒的多数のその数でだというのだ。
「攻めケリをつけようぞ」
「そして逃がさずにですか」
「ここで雑賀衆を倒し憂いをなくし」
そうしてだとだ、信長は言っていく。
「返す刀で石山を攻めるぞ」
「それでは」
「うむ、攻める」
そうするとだ、こう言ってだった。
信長は続いて第二陣を出させた、続いて美濃三人衆が率いる第三陣を。そして自身も残る諸将を率いて本陣を出させた。
中川と長可はすぐに天王寺の砦に入った、すると。
その砦にだった、鉄砲を多く持った軍勢が来た。長可はその軍勢を見て共に櫓にいる中川に対して言った。
「来ましたな」
「うむ、あれがじゃな」
「雑賀衆ですな」
「そしてあの男が」
中川はその軍勢の中にいる一際大きくしかも濃い眉と猛々しい顔の総髷の男を見て言った。その具足も服も鞍も灰色だ。
その男を見てだ、彼は長可に言ったのである。
「雑賀孫市じゃな」
「そうですな、でかい鉄砲を持っていますな」
「うむ」
見ればそうだった、その左肩に巨大な鉄砲も担いでいた。
「あれで撃たれればのう」
「胴が吹き飛びそうですな」
「頭に受ければ消えてなくなるわ
その頭がだ。
「また大層な者じゃな」
「雑賀衆、そして雑賀衆が従う本願寺で最も強い者とのことです」
「八幡太郎じゃな、その腕は」
「そして戦ぶりは温候です」
長可はこうも言った。
「尋常な相手ではありませぬ」
「ではこの度はどう戦うか」
「八郎殿は
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