第六話 水と氷その一
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第六話 水と氷
薊は早速だった、部活の朝練の後菖蒲のいる二年D組に入った。そのうえで入口のところにいた女子生徒にこう尋ねた。
「あのさ、巨峰っていうか巨大っていうか」
「巨門さん?」
「そうそう、巨門さんだよ」
ここでやっと正しい名前が出る。
「お花の名前でさ」
「あの娘ならいるわよ」
もうだとだ、女子生徒はクラスの奥の方に顔を向けて薊に答えた。
「もうね」
「ああ、確かにな」
薊も女子生徒の方を見た、するとだった。
奥の中央の席に彼女がいた、薊は菖蒲の姿を確認して女子生徒に言った。
「有り難うな、今度横浜ベイスターズの試合に招待させてもらうよ、外野席だけれどさ」
「いや、そんなのいいから」
「いいのかよ」
「だって私パリーグファンだから」
女子生徒は薊にあっさりと答えた。
「西武ね」
「獅子党かよ」
「そう、だからね」
ベイスターズはというのだ。
「日本シリーズで会いましょうね」
「交流戦じゃねえんだな」
「会うなら日本シリーズでしょ」
日本一を争うそこでだというのだ。
「待ってるからね、最近うちもぱっとしないけれど」
「何年か一回優勝出来るだけましだろ」
何故か監督の就任一年目に優勝する、西武ライオンズにおいて広岡達朗以来のジンクスである。そこから代々続いている。
「こっちなんてな、三十八年ぶりにやっと優勝出来たらな」
「それからよね」
「全然勝てないんだよ」
優勝どころかだ、最下位街道を爆進しているというのだ。
「ったくよ、どういうものだよ」
「まあね、会うのならね」
「シリーズだな」
「そっちで待ってるからね」
こう話すのだった。
「ベイスターズのチケットならスタープラチナにもあるから」
「カラオケボックスだったな」
「あそこにあるから、別にね」
そちらの理由からもいいというのだ。
「気持ちだけ受け取っておくわ」
「そうか、じゃあな」
「ええ、そういうことでね」
女子生徒との話がこれで終わった、そしてだった。
薊は菖蒲の席に向かい座っている彼女の前に立った。そのうえでこう彼女に言った。
「あのさ、あんたさ」
「二年B組天枢薊さんね」
菖蒲は薊の顔を見上げてクールな口調で言ってきた。
「そうね」
「あたしのこと知ってるのかよ」
「運動神経のいい転校生がいると聞いているわ」
「へえ、あたしも有名人なんだな」
「そうよ。それで私のところに来た理由は」
「ああ、ちょっと聞きたいことがあるんだけれどな」
薊は微笑んで菖蒲に言った。
「いいかい?」
「何かわからないけれど」
菖蒲は感情を見せない目で薊に返してきた、今度は。
「それでもね。お話があるのならね」
「ああ、ここで話す
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