第二章
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「何か誰もね」
「一緒に見えるっていうの?」
「誰もこれといって」
相手がいないというのです。
「特にね」
「そうなのね」
「そうなの、お母さんにそろそろ結婚相手見付けろって言われたけれど」
「私もよ」
お友達もそう言われたというのです。
「お母さんにね」
「あんたもなのね」
「そうなの、けれどね」
「これといった相手が見付からないのね」
「私の好みは黒い毛並みの人だけれど」
お友達はお母さんに自分の好みもお話しました。
「けれどね」
「黒兎ね」
「今いないわね」
「そうね、赤や茶色の兎はいても」
「お家にいる兎は別だから」
野兎である自分達とはというのです。
「穴兎だから」
「そうそう、また違うわよね」
「だから野兎の中から探してるけれど」
「それでもね」
相手がいないというのです、その黒兎が。
それで、です。お友達は困ったお顔でお母さんに言いました。
「だからちょっとね」
「今はなのね」
「そう、他のところに行くわ」
今自分達がいる場所とは別の兎の集会場にというのです。
「そうするわ」
「そうね、じゃあ私も」
「あんたもなのね」
「あんたと一緒に行くわ」
お母さん狐はこうお友達に言いました。
「そうするわ」
「そうなのね、じゃあここから」
「何処に行こうかしら」
「お池の方に行きましょう」
そこにも兎の集会場があるからです。お池の傍には美味しい草も一杯あります。それでそこにも集まるのです。
「あそこにね」
「そうね、ただ」
「ただ?」
「最近あそこに狐が出るっていうけれど」
「あっ、狐は別の場所に行ったわ」
兎にとってとても怖い狐達はというのです。
「だから心配しないで」
「そうなのね。それじゃあ」
「ええ、今からね」
こうお話してでした、お母さんはお友達と一緒にお池の集会場に行きました。するとそこにも兎が一杯いました。
その中で、です。お友達は一匹の黒い雄兎を見て目をきらきらとさせて言いました。
「あの人いいわね」
「あんたの好みよね」
「ええ、凄くね」
こうお母さんに答えるのでした。
「動きも速いし」
「あの人に声をかけてみるの?」
「そうしようかしら。けれど」
「けれど?」
「若しもよ」
ここで、です。お友達は戸惑って言うのでした。
「もう彼女がいたら」
「告白してもね」
「断られるわよね」
「そうなるわね。けれどね」
「言わないとよね」
「何もはじまらないわよ」
お母さんは自分の横で小さくなってうずくまってしまったお友達に顔を向けて優しく声をかけるのでした。お友達として。
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