幼い日の思い出
生まれ、落ちた
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。――それでも。
英雄の手が必死に伸ばされ、吸い込まれるように、ナルトの隣にいた赤い髪の毛を持つ赤子の背中に触れる。
どくり、どくりと。
心臓の音が赤子の体から英雄に伝わり、今此処に、確かに生きているのだという事実を告げる。
更に目から涙をあふれさせながら、英雄は小さく、名を呼んだ。
「カトナ」
赤い髪は、母親譲りなのだろう。
まだ、瞼が上がっていないため、その瞳の色をうかがうことは出来ないが、きっと、母親と同じ、赤い目なのだろう。
夕焼けの中に溶け込んでしまうような、そんな色の瞳なのだろう。
その瞳が見られないことを残念に思いながらも、英雄は指にチャクラを込める。
自分の体の中を這い出した独特の感触に、ゆっくりと、カトナはナルトから少し離れた場所で体を動かす。
ざわざわと肌の下を撫で行く感触は、決して気持ちいいものではないのだろう。
「あー?」
小さな声だった。嗚咽が混ざったような、文字にすらなれない、あどけない声があがる。
カトナは不思議そうに父と母を見上げる。
彼女の手が、指が、全身が、両親を欲して伸ばされる。
されども、赤子の手は届かない。
苦痛に顔を歪ませている自らの両親の姿を、僅かに開いた目で見つめるカトナの頬を、涙が伝っていく。
真っ白な肌をなぞる透明なしずくが、きらきらと、真珠のように輝いた。
赤子の小さな手は彷徨うように、暫くの間、うろうろと何もない空中を触っていた。
だが、やがて金色の赤子の掌にたどり着くと、勢いよく握りしめる。
そうして、自分の手に伝わる、自分以外の温かな熱に安堵したような息を吐く。
ほっとしたように口元を緩ませた子供は、微かな視界に映る二人に向けて、ふにゃりと笑った。
それと同時に、赤子の体に、まるで蛇が這ったかのような独特の痕が刻まれた。内側から歪な曲線が浮かび、何らかの文様が描かれていく。
女が息を呑み、泣きそうな顔になったが、気丈に耐える。
「ナルトを、頼むぞ」
そう言った父親の声に、カトナはむずむずと体を動かした後、自分の腹を撫でている手を、弱弱しいが確かな力で握りしめ、あぐあぐと口を開いた。
声帯が未だに整っていないため、それは言葉にすらなっていなかったが、小さな紅葉のような手を動かして、カトナは確かに、笑みを見せた。
――任せろとでも言うような、そんな顔を、浮かべた。
英雄は目を細め、うんとうなずく。
ごめんねともう一度、目の前のふたりに向けて謝る。
これから英雄は、娘と息子に重荷を背負わせる。
尾獣バランスのため、国のため、里のために、男は自分の息子に九尾の妖狐の半分のチャクラを封じ。そして、自分の娘に息子の負担を軽くするための
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