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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十四話 独立混成第十四聯隊の初陣(下)
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第一中隊、用意よぉし!」
「撃て!!」
 随伴した銃兵の一部も取りつき、半ば強引に照準をあわせ、砲撃をすると散弾が敵の砲兵隊へと飛ぶ。
それが合図であるかのように、丘陵から擲射砲中隊の砲声が轟いた。
一拍おいて、敵の砲列に霰弾が襲いかかる
「第二中隊、用意よぉし!」
「撃て!」
 遅れてきた中隊も霰弾を放つ。
「――どうかね?」
 擲射砲隊につづいて平射砲二個中隊の砲撃により、砲煙の向こうでは無惨な光景が繰り広げられる筈だが敵の煙が濃く少々目標が見えがたい。
 ――黒色火薬の欠点だな。
 無論、煙がおさまるまで行儀よく待つわけもなく、直接馬に駄載させた砲弾を再装填すべく兵達は動き回っている。擲射砲も再び砲列に砲撃を行った。
――どの道、砲兵隊の被害が甚大なのは確実だ。そして正面の敵は全て叩かなければ主力が危険だ。
「よし!各隊は砲列を整え手持ち砲弾を正面猟兵に叩き込め!
各銃兵中隊は小隊横列で砲兵隊の護衛につけ!銃兵の攻勢は主力との合流まで待つんだ!」
 ――さて、敵の砲はどうだ?
目を凝らすと敵の砲は殆ど残骸に成り果てていた、砲兵も大半は物理的にその姿を消し去ったのだろう、僅かながら改装を始めた将兵たちが見える。見事に敵砲兵大隊は壊滅していた。あとは眼前の騎兵・猟兵部隊を片付ければ終わりだ。

「これで、こちらは問題ありませんね」
 聯隊長に張り付いている一個小隊を指揮する杉谷中尉が安堵の笑みを浮かべた。
すでに方陣から横列へと転じた銃兵隊が前進している。
「あぁ、これで火力の優位を利用すれば正面からゴリ押しするだけでも十分勝てる。
剣虎兵達もよくやっているな」
 別どうしていた敵の騎兵隊は僅か小半刻で組織的な抵抗を行う事もなく崩壊状態にあった。組織的な戦闘力をほぼ完全に喪失し、潰走する兵も少なくない。
 事実、大隊本部は既に再編を終えたら敵主力隊を叩くべく転進する事を決定していた。
そして正面に展開していた敵主力部隊は砲兵隊が壊滅し逆に第四十四聯隊の平射砲隊が敵の猟兵を叩き、尚且つ主力の銃兵隊が合流しつつある事で、この限定された戦域内では文句なしに〈皇国〉軍の優位が確定していった。



同日 同刻 独立混成第十四聯隊 聯隊本部
聯隊長代理 大辺秀高少佐


「――第一大隊から伝達!前進開始!攻撃を開始!」

「聯隊工兵中隊・輜重大隊はこのまま待機だ!!
選抜輜重中隊は護衛と共に前進するぞ!急げ!!
砲兵の弾がきれたらお仕舞いだぞ!!」

「情報!第二大隊の接敵までどの程度だ!?」
「第二大隊は既に前進を開始しております!!接敵まであとわずか!」

「聯隊長殿が直率している大隊と急ぎ合流させろ!砲と指揮官の無事を早く確保しろ!」
「第二大隊第四中隊より報告!“集成大隊
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