第三部龍州戦役
第四十四話 独立混成第十四聯隊の初陣(下)
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見ろ」
「――対応が早いですね」
聯隊長がにたり、と笑みを浮かべ、大辺も感嘆まじりの唸り声をあげる。
既に迂回を行い、側背を突いた鉄虎大隊主力が仕掛けた別働隊として動いていた騎兵二個大隊は潰走しかけており、側面を攻撃している第四中隊が鋭兵中隊の支援を受けながら、分断されて混乱しきった部隊を手際よく屠っている。
だがこちらの攻勢を受け止めようとしていた敵の主力部隊がすでに対応をはじめている。敵でなければ素直に感嘆するのだが敵である以上は此方の戦力を磨り潰す敵でしかない。
剣虎兵の強力さと脆さを馬堂豊久は知悉している。
あの夜の戦場で彼の仲間達が上官が、護国の勇士と書類に記されて、その残骸を背負い第十一大隊長となったのだから。
「鉄虎大隊は奮戦しているが主力を叩かねばまずいな――擲射砲の火力が必要だ。下山に対砲兵射撃を急がせろ。聯隊鋭兵および騎兵中隊、第一・第二平射砲中隊に例の兵力部署を発令する」
――だからこそ、有利な戦況で同じ鐵を踏むつもりはない。
「擲射砲隊には既に指示を出しております。鋭兵、騎兵中隊は既に合流に動いております集成大隊の兵力部署発令も間もなく実行に移されるかと」
「さすがだな、大辺。その調子で暫らく本部を頼む。可及的速やかに攻勢にうって出る準備をしてくれ」
剣虎兵が一気呵成に打ち崩した戦列を銃兵で掃討するのがこの聯隊の剣虎兵運用の基礎である。要するに剣虎兵達が分散しきる前に主力が到着し、逆襲に出るべく集結している部隊を叩きのめすのだ。
「はい、聯隊長殿は?」
「俺は集成大隊を直卒して目の前の連中を一気に片付ける。今回はこの一撃が勘所だ、士気を上げねばなるまいよ」
平射砲二個中隊に、本部鋭兵中隊と下馬した騎兵中隊を加え、敵砲兵隊への強襲を仕掛ける事は事前の計画の内であった。
要するに丘陵の地形を利用して一気に接近して砲撃を行い、混乱が治まるまえに戦列を整えた主力と合流して方陣を叩かれる前に火力を削ぐのが目的だったのだが――
「猟兵隊も早期に叩かなければ危険だ。聯隊主力の攻勢も前倒しだ、鉄虎大隊が掃討を終えた後の予定だったが――あの練度は反則だ」
――だが、これに成功すれば増援さえ来なければ俺達が勝ちを得る筈だ。
失敗したら鋭兵達が時間を稼ぐ間に逃げ切れれば万々歳か――あぁ、ヤダヤダ。俺もギャンブル中毒の気でもあんのかな。
自然と弧を描いている唇に触れ、豊久は笑みを深めた。
・
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「平射砲隊!前へ!目標、前方猟兵大隊!
距離五百間まで接近したら順次砲撃を開始!」
聯隊長の号令で二個中隊からなる砲兵隊が前進する。
丘陵を下る故に、その行動は素早い。
「前進止めぇい! 砲撃用意!」
機敏に砲兵大隊最先任下士官となった権藤曹長が叫ぶ。
「
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