6 「Siren」
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リーン...
アア、美味イ。甘イ―――
モット、飲ミタイ。浴ビルヨウニ、モット、濃厚ナ―――
リーン...リーン......
獲物ハ、ドコダ―――
サア、早ク。俺ニ、血ヲ―――
モット、モット、俺ヲ、血塗レニ―――
リーン...リーン......
リーン...リーン......
リーン......
…
――…
――――…
――――――…
「……あああアアアア!!!!」
自分の大絶叫に、ハッと目を覚ました。
そよぐ風が、粉雪を乗せて凪の火照った頬を撫でる。
「…ゆ、め……?」
痛みに意識を失っていたらしい。
それにしても不気味な夢だった。まだ、感触が残っている気がする。皮膚を内側から喰い破られる感覚。心臓に孔の開く、あの瞬間―――
ブルブルと頭を振り、袖をまくって確認する。当たり前だが、そこには無駄のない筋肉に覆われた男の硬い腕があるのみだ。
《花》なんて、あるわけがない。
それも、血を吸う花、なんて。
「……まだまだ、俺も弱いな」
夢見が悪かった程度でこんなに狼狽えて。
夢は、夢だろう?
自分を嘲笑するように鼻を鳴らす。
「……寒い」
冷たい風が体温を奪う。それだけで無く、体の芯から、心が、凍えそうだった。夢のせいだろうか。
無性に、何か、誰かを掻き抱きたくなった。この冷えた心身を温めて欲しかった。
(馬鹿が。そんなこと、誰が―――)
脳裏に浮かんだのは生意気な愛猫、いつだって寄り添ってくれた愛竜。そして、自分に戦う術の教えを乞うた、妹のように大切な2人の弟子。
それから、もう顔も覚えていない、けれども、そのぬくもりは確かに知っていたはずの、母。
(だれ、か―――)
不意に幼くなっていく思考。
その“時”、たしかに凪は遙か遠いフラヒヤの山中に座っていた。足元に転がっているのは、紅い、もとは雪色の毛に覆われていた猿の首。もとは凪と同じ背丈で、かたい筋肉に覆われていた猿の群れは、今しがた凪自身がその手で葬ったのだ。群れの長含めて、たった1人。
その猿の名をブランゴ、群れの長は敬意を表して雪獅子と呼ばれるのだということを、幼き日の凪は知っていた。
(いたいよ)
くたりと下がったままの右腕は、先ほど疲れに動きが鈍ったところを長に掴み掛られたときから動かせなかった。
無我夢中で暴れて、たまたま急所に当たったのか、あるところを蹴ったとき雪獅子の握力がゆるんで抜け出せたのだ。
怖かった。
自分はこんな寒いところで、誰にも見届けられないまま死ぬのかと思った。
(だれか、たすけて)
それは普段決して口にしてはいけない言葉。言ったら、守
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