6 「Siren」
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の限界で1人10本分しか持っていけないというのが通説だが、そこは根性でどうにかする。瓶の口のくぼみに麻糸をこよって作った紐の輪をうまく縛り、いい具合に連結させるのだ。紐の端と端をポーチのベルト部分に固く括り付ければ、完成。菖蒲の10分の1ミリ単位で正確に動く骨ばった指が、瞬く間に3人分をこしらえた。
流石、と拍手するちびっこ2人に、菖蒲は年甲斐もなくふんぞり返った。
「これで1人13本。3人で合わせれば凪兄さんの分まで十分カバーできますね。よし。それじゃ、作戦会議します!!」
「おー!」
「よっしゃ、どんと来い!」
すっかり暗くなってベースキャンプの周りの松明に火を点けた3人は、ベッドの上に地図を広げて岬のいう“凪兄さん救出大作戦”を話し合い始めた。
(生きてろよ、クソガキ……!)
(兄さん、次は僕たちが、必ず助けます……!)
(みー達が行くまでもうちょっと待っててね、にいちゃ!)
それぞれの胸に、決意を秘めて。
******
「はぁッ…はぁッ…はぁッ…」
白い息を吐きながら、身を震わせる。赤いラベルが貼ってあるのを確認してから栓を抜き、本来少しずつ口に含めるべきものを一気に呷った。喉を伝い落ちるとろりとした食感は直後カッと燃えるように熱く変わり、ホットドリンクはすぐさま凪の体を内側から温める。
崩落したエリア7とエリア2の入り口。大きく口を開いたそこを塞ぐほどにまで積み上がった氷塊のくぼみに、凪は座り込んでいた。身の丈ほどもある大きな氷の塊は良い具合に風を遮り、叩きつける吹雪から凪を守っていた。
幾層にもよる永久凍土で形成されていた洞窟は凪の火走りを受けても全壊はせず、天盤の幾枚かが剥がれ落ちたのみとなった。といっても、2エリア間をつなぐ部分にはほとんど隙間もなく、中のギギネブラ達が生き埋めになったのは確実だろう。4頭が生きているのか、それとも圧死したのかまでは確認できないため、いい加減抑えきれなくなってきた体の悲鳴を収めるのと同時進行で暫く様子をみることとする。
地形を少々変えてしまった。この分なら瓦礫さえ取り除けばまた4つのエリアの中継地として活用することは可能だろうが、それまで凍土のマップの変更を申し出なくてはならない。面倒な。
誤魔化すようにそこまで考えて、やっと落ち着いたように体を伸ばす。母の内で眠る胎児のように丸まっていた凪は、痛みの余韻にまだ顔をしかめていた。
―――ズキッ
「うっ」
再び左眼を強く抑える。心臓の鼓動に合わせて眼球が脈打つのが分かった。
ドクン...ドクン.........ドクン...ドクン...
(な…んなんだよ、これはっ……!)
自分の身に何が起こ
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